映画について私が全然知らないいろいろな事柄

@ohirunemorphine が、だらだらと映画についてあれこれ考えます。

イエ爺の隠し球!

もうダメです、

こーふんが抑えられません。

 

毎年秋に行われるポーランド映画祭。

怪優としても知られるポーランドの巨匠イエジー・スコリモフスキ監督が毎年監修なさっている特集上映です。

毎年あまり代わり映えしないラインナップだな… と正直なところ思っていました。

しかし、ちょこちょこ見逃せない作品が出るから油断ならない。

 

今、秋の例大祭その1・東京国際映画祭の真っ最中。

私は仕事を全抜きする勢いで通っております。

        おまえはアホか

そんなさなか。とんでもないニュースが。

 

スコリモフスキ監督幻の傑作『早春』

ポーランド映画祭2017で公開!

 

【予告】ポーランド映画祭2017 - YouTube

 

 なんということでしょう!!!

 

私はこの映画を完全な形で観ることを心待ちにしていました。

この記事で、この作品は国内の権利関係で上映も円盤化も未だ叶っていない、と書きました。

一方、本国イギリスではもう何年か前にブルーレイが発売され、イベントで主演俳優2人が登壇、という羨ましい話を聞いていました。

      ピコーン(電球が脳内に浮いた音)

  円盤なら輸入すりゃいいじゃん!

  買いました。どこかヨーロッパの国のやつを。

  多分ジャケットが違うので本国ではないだろうやつ。ドイツかな?

 しかし

 

 私が買った円盤はうちののプレーヤーでは再生できなかったのですがぁぁぁん

 

実は私、十何年か前に、

某所の企画で、この作品を観ています。

テレビ放送を録画した吹き替え版で、カットされている箇所もあるらしかったのですが、

それでも静かに狂喜ものでした。

 

ひょっとしたらそれ以外にもこっそりと上映会のようなものはあったのかもしれませんが、

あくまでそれはひっそりと行われていたものでした。

 

こつこつパンフレットも探し続け、見つけたときには古書店の店員と無言の微笑を交わしたものです。

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これです。今撮りました。

    こんなものが即座に出てくるウチって

 

あのとき、「そろそろ権利クリアになりそうです」と聞いて早幾年。

私がこの作品を追い始め、いちど観ることが叶ったのは干支一回り経った頃。

それからまた幾星霜。

『早春』はずっと「幻の傑作」のままでした。

 

2008年の『アンナと過ごした4日間』で、

スコリモフスキ監督は17年ぶりに作品を発表しました。

再評価というのでしょうか。それから過去の作品が次々と上映されました。

『身分証明書』『不戦勝』『手を挙げろ』『バリエラ』…

 

私は1999年、『出発』が公開された当時、劇場で観ています。

いまはなきシネセゾン渋谷のレイトショーだったでしょうか?

音楽が超かっこいいの。

物販でサントラあった気がするけど、その時は買いませんでした。

あとで欲しくなって購入しましたが。

https://www.amazon.co.jp/出発-1-Depart-Bariera-クシシュトフ・コメダ/dp/B003BR59EQ/ref=sr_1_1?s=music&ie=UTF8&qid=1509119783&sr=1-1&keywords=le+depart+bariera

『出発』自体は1967年製作。主演はジャン=ピエール・レオとカトリーヌ・イザベル・デュポール。

 といえば、ゴダールの映画を思い出す方もいらっしゃるかもしれませんね。

これもまた素晴らしい作品です。鏡に半身を映して遊ぶシーンが有名かも。

   あと車真っ二つに割れる場面とか

これがロードショー公開されたというのはとても貴重なことでした。

というのは、先日資料を漁っているとき、スコリモフスキ監督の作品、一般公開(と言っていいのかな。映画祭とかじゃなくて、いわゆる劇場公開ね)されているのがあまりに少ないことにびっくりしたんです。

出せば公開される今とは全然違っていたのね!

 

一般公開されたのは、実は『出発』と『早春』(『ライトシップ』もそうかも)、そして監督として再び活動を始めてからの『アンナと過ごした4日間』『エッセンシャル・キリング』『イレブン・ミニッツ』のみ、

そして、『アンナと〜』以前の作品でほぼリアルタイム公開されていたのは、この『早春』くらいなのだそうです。

遠山純生イエジー・スコリモフスキ読本 「亡命」作家43年の軌跡 』,boid, 2014

 

なぜ私がこの作品を心待ちにしていたかは、「ことばの映画館」第3館に書きましたので端折ります。ご興味をお持ちの方機会がありましたらご一読下さいませ

【模索舎store】 ●ことばの映画館 vol.3

(ここで冊子の宣伝するなよ)

くだらないといえばあまりにくだらない理由です。

しかし、この作品は、純粋に、私の人生を左右した作品であることに間違いはないでしょう。

 

www.youtube.com

 

ああ、観たいなぁ!

どうしても観たい!

朝イチで行くようかなぁ!泊まり込みかなぁ(めいわく)

 

どうでもいい話ですが、私の顔には白くて長い産毛がありました。

「福毛」というらしく、

願いが叶うとき抜けると聞いたことがあります。

 

それは確かなようです。

この話を聞いたとき、うろたえつつ、

顔に引っかかったホコリをはらおうとしたら

 

        ブチッ

 

と抜けたのですから。

  私の心願、くだらなすぎる…

  私の人生のようにくだらなすぎる…

 

山形強行軍。

一度完成まで行きかけた記事が

パソコンのフリーズにより全部消えたことについて

ショックを隠しきれません。

 

先日、山形へ行ってきました。

山形国際ドキュメンタリー映画祭に初めて行ったんです。

 なにかとクリアすべきハードルが多かった初めてだけに

 まず

 

宿がねぇ

 タイムテーブルが出て、観たい映画決めて、最適なスケジュールだして、いざ宿を取ろうとしたら

 山形市内はもう宿がねぇ

 

お金出して高い宿ならあるのかもしれないけど。

映画観に行くのに高い宿って取りたくないよね。

 

今回の本命を決めて、日程絞って、日月で行くことにしました。

それなら市内の安い宿が取れたんです。

 

あと交通手段ね。

新幹線は高いし、終映が遅くなったらだめかもしれない。

高速バスは結構時間取られるので面倒。

よって

 

自分の軽自動車でブーンと行くぜ

ひゃっはー!

 

4時出発おはようございます

夜明けの高速を軽快にかっ飛ばして朝9時頃には現地入り。

お腹が空きました……

 

飯屋がねぇ

いやマヂでないの!

路上に所在なさげに突っ立っている人々。絶対同じ匂いがする!

 

大正義モスバーガー

入った途端に客が全部映画祭のチラシ広げているという豪快な光景。俺は一人じゃない!いやぼっちだけど!客が全員映画祭の客!モス書き入れ時だな!

 

この飯屋不足には滞在中悩まされるハメに陥りました。

 

今回のメインというかヘッドライナーはこの2本。

『エクス・リブリス』『翡翠之城』

それから観られるものを観る。

 

カラブリア』これめっちゃ面白かったなぁ!ドキュメンタリーの枠を超えて、おっさんのバディロードムービーとしても面白かったよ。

あちこちから人が集まる場所、土に還る故郷、そもそも故郷という概念があるのかわからない流浪の民が足を下ろした場所、「故郷とはなんぞや」とすごく真剣に考えてみた。ジプシー音楽好きにもたまんなかったね。ジプシーのミュージシャンとしてセルビアで売れっ子だったおっさんがなんでスイスに根をおろすことになったのかも興味深い。

 

『エクス・リブリス』は元図書館員としては観ておかねばならない作品。

「アメリカ最大の公共図書館」としての使命感、そして「公立」ではないが故の矜持(「公立」と「公共」の違いね)。こんなにも熱い、そして能力が求められる図書館って!羨ましくもあり、しかしこの熱さを日本にそのまま持ってくるには無理がある。あまりにも日本の状況はお粗末であり、その一端を垣間見た自分には辛いものもありました。

どっちにしても司書課程においてはこの映画見せて2単位でいいと思うよ。それくらい濃密なんだ。理想の図書館なんだ。理想とは遠くにありて思うもの。

コンチクショウ、とあの頃のイライラを思い出してしまったことでもありますが、私はもうあの業界から足を洗ったのでした。戻ってあげても良くってよ? 時給が5割増しになったら考えても良くってよ?

 

さて、飯屋不足の中ラーメン屋で夕飯を済ませ、明日の駐車場どうしよう、安いところねぇかなぁ、とぶらぶらしていたら知り合いにバッタリ。

山形ドキュメンタリーのナイトライフにお友達は不可欠です。

ドキュメンタリーレコードを聴く会にもお二人の案内がなければ行けなかったことでしょう。めっちゃ面白かったもうどこ刺されてもツボでした。

噂に聞く、映画ファンの交流の場「香味庵クラブ」ですが、人見知りに優しくない仕様。手持ちブタさんのままとぼとぼ帰ってくる羽目になりかねません。が、初めての山形なら行っておきたいところです。

店の外まであふれた人々、ビールを飲みながら眺めた空にはぽっかりと綺麗なお月様が浮かんでおりました。

 

……映画を3本も観て、イベントに紛れ込み、日付がかわって25時、宿に戻る。クッタクタである。さすがに丸一日近く動き回っていると意識も朦朧としている。寝る。

 

しかし悲しいかな宿は10時で叩き出されたのでありました。もう少しゆっくりさせておくれよ。

ぼんやりが覚めきらないまましばらくガソリンと朝ごはんを求めてドライブ。

不慣れな土地で食べ物にありつくのはこんなに大変なことか

 

今日は『酒田グリーン・ハウス証言集』『このささいな父の存在』そして『翡翠之城』を観る。

 

「世界一の映画館」と言われたグリーン・ハウス。ある出来事を境に人々の口にのぼらなくなったこの場所を再評価する作品。

グリーン・ハウスがいかに人々の記憶に残る場であったかを証明するような満員ぎうぎうお立ち見ぶり。私は席を譲るべきだったのではないだろうか?

まさに山形ニューシネマパラダイス、映画を愛し、映画館を愛する人々の心の中には各々思い出の映画館が建っているのであります。うっかり涙も出ました。涙腺緩いんだよ!

 

ちなみにこの映画では「映画とコーヒー」について熱く語られましたが、私の心の中にぽかっと建つ一軒の映画館は、リアルに「映画とコーヒー」をやってのけたところです。あやしくて胡散臭くて、けど夏休みは子どもたちの溜まり場だったあの映画館。気づいたら、日本でも指折りの美味いコーヒーを出す喫茶店となっておりました。学生の頃日常的に舌を肥やしていたのは贅沢なことだったのだなぁと今思います。そして、当時「宝塚」なる単語は、うちの地域の子どもに間違ったイメージが持たれていた理由も、なんとなく思い出しました……

 

翡翠之城』は、『マンダレーへの道』で、不法入国の労働者をあまりにもリアルに描いたミディ・ジー監督の作品。お兄さんの協力のもと撮影された、ゴールドラッシュならぬ翡翠ラッシュの街の光景。

そこは、各国政府と、民族の権利争いの隙間をかいくぐって、一攫千金を狙う男たちが蠢く地獄のような場所でした。地獄も通常営業になると日常です。そんな彼らの、穴を掘り、翡翠を探し、時にアヘンを嗜む日常が、映されます。

いかにもインテリ然としたジー監督ですが、「自分もいずれ翡翠掘りになるはずだった」というから驚きです。そういえば、『マンダレーへの道』は身近な人々のリアルな物語である、と言っていたことでした。しかし、そこで運命の歯車がガチャッと食い違った。

監督は若くして台湾に渡り、今は映画監督として活躍中。歯車ってすごいですね、怖いですね、なにがあるかわからないのですね。

そしてこの作品は「16年もの間疎遠だった兄弟が、再び家族となっていく様子」をも映し出しているのです。そりゃそれだけ顔を合わせていなければ、そしてある意味「山師」なお兄さんと、そこから抜け出した弟、境遇も全く違えば他人も同然でしょう。しかし、監督は、今は翡翠掘りの親方から足を洗ったお兄さんを、「僕の映画のプロデューサーになってほしい」というほど信頼している。兄弟の映画作り、観てみたいなぁ。

そしてこの映画、遠景がとてもいいんです! 地獄も遠くから見るととても美しく見えるんです。ブリューゲルの描く地獄ってこんな感じなんじゃないかな、とちょっと思った。

 

ドキュメンタリーってなんだろう、としげしげ考えたよね。ドキュメンタリー=ノンフィクション、ではない。全く違う。そこには確かに監督の意図がある。『このささいな父の存在』なんて、身近な人々を撮影して、イメージのままに編集したコラージュ、映像詩って感じだったし。これは現実ではない。現実ではないドキュメンタリーも余裕でアリ。

そして、ここから一般公開されるそのチョイスも、誰かの意図。配給公開も編集のうち。

ドキュメンタリーって、なんだろう?

 

しかしやっぱり12日は勿体無かったなぁ。せめて2泊はしたかったなぁ。つくづく、日銭仕事で毎日仕事仕事ってお金のことばかり考えている貧しい自分に気がついたよ。だって日銭仕事ってつまりは1日仕事入れないとそれだけ稼ぎが減るってことでさ……なんだか2泊も映画三昧って贅沢すぎる気がしてさ……まぁなにを抜かすか先月末は5日間も台北でぼけっとしていたヤツが今更、とも思うけどさ……

懐があまり豊かではないことは事実だけど、もうちょっと気持ちにゆとりを持とうと思ったことよ。実際仕事仕事言ってても今日みたいに風邪ひいて仕事休まなきゃならないこともあるしね! 季節の変わり目ってどんなに気をつけてても仕方ないことあるよね!

 

帰り道はロスト・ハイウェイ

ぼんやりしたまままたも3本映画を観て、現地を出たのは夜10時過ぎだった。

お腹も空いていたけれど、これ以上遅くなると途中で眠くなってしまう。もうまっすぐ帰ろう。

山形蔵王から高速に乗ったんだけど、

暗い!

怖い!

まぢ暗い!

ロスト・ハイウェイ』の冒頭シーンとか、『マルホランド・ドライブ』の真っ暗な道とか穏やかじゃない!そんな光景!

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自分の車のライトで照らされたところしか見えない、他は漆黒の闇。やだこれ!これで5時間!

意識が異空間にぶっ飛んで行きそう!

 

今聴ける音楽限られるわ!

というわけで

 

岡村ちゃんを全力でガンガンかけて

ついでに全力で歌いながら帰ってきたのですが

 

必死こいて運転して帰宅して

ライブ後みたいに耳がキーンといっておりました。

どんだけガンガンかけていたんだろう?

まぁ結構ヤバげにガンギマリ状態だったよね。

 

さて。

高速代と駐車代とガソリン代足したのと

時間的拘束が大きい高速バスと

どっちが安いんだろう?

 

答えはまだ出ない。

 

一枚も写真を撮ってこなかった山形強行軍。

全く関係ないけれど

帰り道を救ってくれた岡村ちゃんの曲をお聞きください。

ええ、私は全力でこれを歌いながら帰ってきたんです……

www.youtube.com

 

ふぉぉぉ!!!!(じゃかじゃーん)

牯嶺街探訪。

一週間以上経ってしまいましたが、

台北に行っておりました。

 

あちらはまだまだ真夏。

こんなに汗だくになるかというくらい汗をかきました。

美味しいものをちょこちょこつまみながらの街歩き。

 

さてどこへ行こうかな、

と地図を眺めていたところで

目に入りました。

「牯嶺街」。

 

ここで行っておかねばならぬ、という謎の巡礼者の気分になりました。

 

MRT「中正紀念堂」からおもてに出ます。

駅を出るなりめっちゃ地元の方の多そうな市場があります。

お腹すいたな……

しかし南海路をずんずん歩きます。

 

程なくして少し横に入ると「牯嶺街」の路地があります。

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もう完全に住宅地ですね。よそ様のお宅にカメラを向けるのも憚られるので

あまり写真は撮っていません。

が、所々の狭い路地に、なんとなく雰囲気が残っているのは気のせいでしょうか。

 

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こんな素敵な建物がありました。

ここは「牯嶺街小劇場」。

かつては日本政府の拘置所や警察署として使われていた建物だそうです。

「上あがっていい?」と拙い英語で尋ねたところ、

「今はロビーしか開放してない」とのこと。

老朽化しているということですし、地元アーティストの拠点として使われているようですし、

ここはおとなしく写真だけ撮らせてもらって退散。

 

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素敵なロビーです。

 

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ちょっと路地を一本入るとこんな建物も残っています。うわー雰囲気あるなぁ。

 

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てくてく通りを歩きます。この道はもうなんとなくそれっぽくありませんか?

 

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途中「牯嶺街公園」でひと休み。辺りを見回しても完全に住宅街です。

 

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お腹が空いたところで大好きな胡椒餅のお店があったので一つ所望。

おばちゃんがとっても親切でした。

 

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これは写真で残しておくしかあるまい(笑

その場で撮るのは憚られたので1日持ち歩いて宿で撮りました(笑

 

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麺線!

うっかりニンニクがっつり入れられてしまいました(デフォルト)。

プリプリの牡蠣とモツ。

美味しかったけどブレスケアとガムをその後噛み続ける羽目に(汗。

 

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てくてく歩いて「建国高等中学」まで来ました。

道路を挟んで教会があります。

そういえば、この界隈、なぜか何件か教会を見かけました。

張家の二番目のお姉さんだったでしょうか?敬虔な信者でしたよね。

(小翠も教会に出入りしている的シーンもあったような……)

 

お昼時。

街中には建国中学の生徒がめっちゃうようよしていました。

あのカーキ色の制服と胸の刺繍!!うわぁお!

もう私、大コーフン。

学生さんにカメラを向けるのは憚られましたのですが、

 

    交差点で一瞬こっそり地図眺めてるふりしてシャッターを切ったのは

    とてもお見せできません。

 

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MRT「古亭」からの方が近かったようなのですが、

うっかりめちゃくちゃ歩いてしまいました。

汗もうダラダラ。

 

これから映画に行く予定だったのですが、汗くさくてスミマセン的な感じでした。

 

これもひとつの聖地巡礼と言ってもいいでしょうか。

Brighter summer day、歩きながら子どもたちが縦横無尽に走り回っているような気がしてならなかったのです。

 

そんな幻のようなひととき。

 

 

これでシメにしたい『牯嶺街少年殺人事件』その5(シマるのか? )

まぁ続きを書くのにあれこれ考えているうちに

こんな本が出版されていました。

 

filmart.co.jp

 

未読ですが、こんな凄そうなのが出てしまったら、こんなど素人が今更あれこれ語るのもおこがましく、また何を語っても浅い代物になりそうなので、今回はあくまでも「私が見てきた牯嶺街少年殺人事件にまつわる諸々」であるということを明確にしておきたいと思います。

まぁそんなこと言ったら全ての映画について語りえず沈黙するしかないわけなのですが。おっ。哲学的な名言を引用するとちょっと頭いい人っぽく誤解してもらえそうじゃん? (ばか)(趣旨が違うわ)

 

東京国際映画祭、『牯嶺街少年殺人事件』の上映は、まんまと裏でクロージングセレモニー(=受賞作品発表)が行われるという取材パス所持者泣かせの番組編成でした。何を考えているんだ、と一瞬思ったことでありますよ。途中から入れるのか、と聞いたら「ダメ」だってさ!

まぁヒルズのどっかで中継見られるだろ、ともはや虚無の目であります。

 

というわけで最前列、そそり立つ銀幕を前に、ほぼ斜め真上を見ながら過ごした4時間ではありますが、

まず画面の明暗が激しく、登場人物が多く、そして登場人物がいろんな二つ名を持っているために

       誰が誰を指しているのかよくわからない。

しかしその画面の、これまた垂直水平がくっきりした構築的な画面と、少年少女の火花も散りそうな一触即発の緊迫した空気、そして一人の幼いファム・ファタルプレスリージョン・ウェイン、いちいちアップで抜かれるコンバースなどアメリカ文化の影響、見づらい画面でも相当控えめに言って

       こりゃすごいわ……

 

お昼挟んで4時間ぶっ続け、途中から場内が

       ぐー

       ぐー

       ぐー……

 

と、もう生理的に各々の人体が空腹を訴えるのをなだめすかす、そして、君は一人じゃない、ほら、僕の胃袋も空っぽだ、という妙な連帯感も生まれたことでしたよ。お腹が鳴るのは別に恥ずかしいことじゃないよね!

 

これは劇場公開を待つしかないよね、しっかり見るしかないよね、と決めたことでありました。

 

それからしばらくして。

新しいメインビジュアルのお披露目がありました。

 

「この世界は僕が照らしてみせる。」

 

……語り得ないことに対して沈黙しなければならない時もありますが、語ってはいけないことに対しても沈黙した方がいいこともあるでしょう。

しかし私はあえて言いたい。

 

 ダセェコピーつけんなよ。

 

そんなセリフあったかなぁ、と思って何度思い返しても、そんなセリフなかったような気がするんです。

なんでポスターには無理やりコピーをつけなくてはいけないのでしょうか。てーかオリジナルのポスターを流用しちゃダメ? これも権利の問題? けど前売りの特典はオリジナルビジュアルのクリアファイルだったよ?

 前売り? 買ったよ!

 

前売りを買ったのはまぁ「オリジナルビジュアルのおまけがついてくる」というのも大きかったんですけど、

 どこの劇場でも一律2200円一切の割引なし

という超強気の価格設定だったから、ってのもあります。

(でも確か『ルートヴィヒ デジタル修復版』の上映の時もそんな感じだったような。デジタルリマスターはひょっとしたら3Dとか4DX並みに「付加価値を料金としてつけられる」コンテンツになってきているのかもしれません)

 

そうこうしているうちに上映が近づいてきました。そんなときに飛び込んできた

主演・張震 舞台挨拶決定!!!

 

中華圏のエンタメに異様に詳しい知人と

「ぜってぇ行きたい」「でも前売り買っちまったよ」「そりゃおかわりするでしょ丼何杯でもいける」「争奪戦参戦する?」

とモニャモニャ深夜にご相談。そして

共闘しようぜ!」

 

かくして見事に該当回のチケットをゲットした我々二人。主に引きが強い知人の功績であります。ありがとうありがとう!!

「やべぇ震えてきた」「サインもらえないかな」「ここでは無理そうだね」「でも絶対年内にまた日本に来そうな気がする」「その時は是非」とまるっきり乙女な会話をしておりました。

張震氏はこの2月にベルリン国際映画祭に出品された日本人監督作の主演をなさっていたので来る機会はあるんじゃないかと思っています。知らんけど。なんかそんな気がするだけだけど。

そう、この12月の公開が決まり、その前に今年の東京国際映画祭で特別上映される SABU監督『Mr.Long / ミスター・ロン』です! …あ。またtiffかよ。…チケットまた争奪戦必至だな…)

 

そして

キターーーーー!!シャオスー!!!

顔ちっちゃ!足なっが!ほっそ!なにこの超イケメン!

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(撮影・おれ。ぼけぼけぶれぶれなのは携帯品質! カメラ持ってきゃよかった!)

 

なんかさぁ、子どもの頃からの等身バランスが全然変わってないんじゃないかっていうとんだモデル体型だったよ。映画の中では中学のカーキ色の制服を腰高気味にベルト締めて着てるんだけど、体の半分が脚だよ! そのまんまの比率で大きくなった感じだよ!

 

はぁはぁ。私は一体何にコーフンしているのでしょうか。

 

きっちり正面で観た『牯嶺街少年殺人事件』。

強いコントラストと直線的な画面構成、その中を駆け回る群衆(子どもたちだけど)に、ベルトルッチの『暗殺の森』を思い出したのは私だけでしょうか? 不勉強にしてエドワード・ヤンベルトルッチに影響を受けているかどうかは知りません。知らないままにしておこうかと思います。思っているのは私だけ。

そして、この物語は台湾本省人外省人の対立で不安定な社会の物語です。主な登場人物は大陸から渡ってきた外省人。その中でも格差があることがはっきりと示されます。

若者たちは徒党を組み、一触即発。一人の少女をめぐって殺し合いまで起きているようです……

 

対立するグループのリーダーの女である二人の少女(本作のヒロイン、シャオミンと、「クレージー」と呼ばれるちょっと年上っぽいイイ女)。シャオミンは喘息持ちの母と共にあちこちを転々とする生活。一時身を寄せた集落(眷村、と言うらしいですね)の水場で二人は顔を合わせます。

歯ブラシをくわえていても迫力満点のクレージー。敵対関係にあるグループのリーダーの女である二人。クレージーはシャオミンに一瞬難癖をつけます……しかしそして二人は肩を抱き合います。

シャオミンはあちこちを転々とする生活ですっかりすれっからしになってしまったのでしょう。見かけはふわふわ真っ白ですが。消息の知れない男を待ちながら、とりあえず流し目を送れば男が釣れてくる、それが食扶持になる、そんなすれっからし。女同士、わかりみあるしんどさが通じるでしょうね。この水場での一瞬の友情が、のちに刃で切り裂かれます。

 

すべてが直線的に傷つけ合う世界で、ひとり輪郭がはっきりしない、薄明かりを放つような少女。

その白い光は まるで さまざまな色の光、けっして綺麗な色ばかりではない光をすべて吸い込み、放たれているかのようです。光の三原色ってありますよね?あれ、例えるなら。

 

「私のことは変えられない、この世界が変わらないように」この諦念に満ちたセリフに基づいて、ポスターのコピーが設定されたのでしょうが、これはどうかと思いました。

シャオスーは「世界を変えたい」というより「君には僕が必要だ」という根拠のないのぼせ上がりーー恋ゆえの、恋しちゃあかんタイプの女への恋ゆえのーーそして「君を変えたい」という心境に至るのですから。それに応えたのが、さっきのセリフです。

シャオミンのオトコ、ハニーの登場シーンは「どこのヤンキー漫画だよ」というような仰々しさ満点でしたが、彼のどこかアメリカ人を思わせる風貌も相まって妙に強力な背景を感じさせました。お前は何故海軍セーラー服を着ているのだ! という突っ込みすら忘れる佇まい。シャオミンのオトコはただ一人、ハニーだけ。その思いを心に沈め、方々からちょっかいを出されるのをいなす毎日。そりゃ虚無の目にもなりますわ。

ハニーのセリフはエドワード・ヤン監督が吹き替えているんだそうで、若いのにずいぶん達観した役だからでしょうかね。

 

また、この作品におけるアメリカの影響は観る人全てが指摘するところですが、先ほど一瞬触れましたが、登場する子どもたちもどこかジェームス・ディーンっぽい子が多い。台湾って多民族だから、そういう子も珍しくないんでしょうか。それともあえてキャスティングしたんでしょうか。ちょっと興味深いところです。(でも外省人の軍人の子ども、ってことは大陸軍人の子ですよね、全然アメリカっぽい要素ない。洋風の顔立ちはたまたまでしょうか。)

 

この作品は複雑すぎて、一貫した思いをきちんと文章にできないのがもどかしいところであり、私の力不足を感じるところでもあります。

けど、間違いなく控えめに言って傑作、この際語彙力のなさをさらけ出しますが、奇跡の一本と言わせてもらおうかな、と思います。シンプル・イズ・ザ・ベスト。

この映画という広い海で出逢えた奇跡にマジ感謝

という頭の悪そうなシメ! うわー我ながら馬鹿っぽい! 自分で書いて馬鹿っぽさがラーメンの脂みたいに浮いてきてるわ! 煮えてる! お前煮えてるだろ! 

 

じゃぁ頭の悪そうな感想をもう一個述べとくね。

『牯嶺街』のリサ・ヤンとか、

『ブラインド・マッサージ』の、カップルで転がり込んできたマッサージ師チャン・レイとか、

ふくふく真っ白で柔らかそうな女の子ってたまらなくエロいよね!!!

もう触りたくなるよね!!ツツーッてやりたくなるよね!!

 

頭が悪そうというよりもはや変質者同然だが文句あるか。

先に謝っておく。すみません。

 

やっと『牯嶺街少年殺人事件』を拝むことができる……まで。(牯嶺街その4)

2016年の夏のことでした。

ぼんやりtwitter眺めていたら

カナザワ映画祭の告知で

 

『牯嶺街少年殺人事件』上映します!

 

と盛大にぶち上げていたので驚いたものでした。

 

やっとクリアになったのか。

できたのか。

長い道のりだったことよのぅ。

 

と思いながらHPに飛んでみたら

   なにこれ。

 

10年目にしてファイナル!

とか

B級映画に盛大に特化した映画祭なのはまぁいいとして

 

なんつーか……

どうにも収まりと趣味の悪さを感じたものでした。

 

露悪的にもほどがあるだろうよ。こういうのが好きな層が大集結するって結構なカオスだよな。わかる。

大丈夫かよ。これ炎上して話題稼ぐパターンだよな。

ここでやるのか……

 

観てぇ

思わず金沢行きの路線を調べてしまったのは本当です。私だけじゃないよね。そういう人私だけじゃないよね。

しかしその後ほどなくして

 

「アメリカからの許可は出たのですが国内から横槍が入りました」

(あえてリリース記事へのリンクは貼りません)

許可とれてなかったんかい!

 先走りにもほどがあるだろうって。やばいとこで塩漬けになっていた代物だぜ。

 上映中強面のお兄さんが上映中に銀幕切り裂き始めてもおかしくねぇぞ。

そんなことになった日にゃその場にいた人々は歴史の生き証人じゃ。孫子の代まで語り継ぐが良かろう。

 

ちょっとそんな想像しちゃったけどちょっと寺山修司の実験映画的な光景だな。

 

あーやっぱり観られないんだなぁ、と思っていた数週間も経たずして。

 

東京国際映画祭でやりまあーす!!!」

 

 ……どんな大人の事情だよオイ!

このわずか数週間足らずの間に何があったんだよ!

もういろんな想像しちゃうよね。いろんな想像して眠れないよね。

そして公式見てみたら

 TOHOシネマズ六本木スクリーン9

客席数わずか250あまり!しかも一回しか上映がない!

 これはチケット争奪戦必至!うぉぉぉ戦争だぜ!!!

 

チケット発売日みたら

  げ。仕事じゃん。

 

 まぁ仕事は「ちょっとゴメンなさいこの時間に休憩ください」って言って外出して

 スマホでアクセスしてもしてもしてもしてもしてもしてもしても

 

 弾かれまくりでダメじゃん!

 

そうこうしてるうちに休憩時間は過ぎ、全然チケットサイトにすら繋がらないままで

しょんぼりと仕事に戻ったのですが、

後で見てみたら

 

発売後15分とかそこらで鯖落ちでチケット確保できたかどうかすら定かではないという阿鼻叫喚

twitterには広がっておりました。

 

 焼け野原つーかぺんぺん草すら生えてねぇじゃねぇかよ。

 

どーせこのわずかな客席の中、セレブなみなさんのために大量にいい席押さえてあるんだぜ。

わしら庶民はそのおこぼれを必死に拾うんだぜ。ギブミーチョコレート!

 

まぁどっちにしても公開は決まっている。急ぐ必要全然なかろう(くやしまぎれ)。

 

秋風も吹き始めた頃。

「なんかわからんけど席が開放されてる!!」という情報が!

速攻行ったよね。もうどこでもいいから押さえたよね。

取れた、という満足感だけでもう後はどうでもよかった。

 

行ってみたらガチの最前列、スクリーンは見上げるようだった。そそり立つ銀色の壁。

 これで4時間過ごすのかよ……大丈夫か俺の首は?

 

つづく。

(まだ続くのかよ)

 

P.S.

10年目のファイナル、と謳っていたカナザワ映画祭

言った舌の根も乾かぬうちに

今年も開催された……というか

現在ゼッサン開催中だそうな。映画祭っつーかもう田植えから稲刈りまでの勢いの長期戦だな。

また今年もよく燃えそうだ……

 

(話を元に戻して)恐怖分子から牯嶺街へ。その3(また余談だよすまないね)

途中で全然違う話を挟んでしまったのでどこまで話したっけかな状態です。

どうも。オヒルモルヒネです。

 

8月はクッソ忙しくてストレス溜まり放題で

ない暇ができたときには缶チューハイかっ喰らいクスリ飲んで寝るという

いつお迎えが来るかわからない状態でありました。

よく訓練された立派な肝臓の持ち主であるせいか

毎晩死ぬように倒れ、毎朝恥ずかしながら生還してまいりました。

いや私のことはどうでもいいんだ。

 

どこまで話したっけかな。

『牯嶺街少年殺人事件』がめでたく日の目を見るまでの

あたかもセミの幼虫が地下深く潜っていたような時代のお話です。

 

『牯嶺街少年殺人事件』公開までのことについては、

2015年に久々に公開された『恐怖分子』(1986)にも触れなければならないでしょう。

この作品は1996年に劇場公開されましたが、東京での公開はセゾン系列のスタジオ200、ということは小規模の公開だったのではないかしら。知らんけど。当時のキネ旬の4月から7月分を確認しておくべきだったかもしれません。

しかもソフトはレーザーディスクのみのリリースだったそうです。これもまた埋もれてしまいそうになっていた作品なのかもしれません。

しかし。幸いにして、この作品は再び私たちの前にその姿(?)を現しました。

www.youtube.com

 

私は震えました。

ここまで鋭く、痛みすら感じさせるほど鋭く、美しい映画があっていいのか。

「煙が目にしみる」をまるまる一曲使って、一組の母娘のわずかな平安と一組のカップルの修羅場を同時に見せる、そのシーンのなんという素晴らしさ。語彙力帰ってきてくれ。そんなものははじめからない諦めろ!涙が出るのは煙が目にしみるせいだぜ!

 

この映画はまんま現代芸術に通じると思います。もしくは一流のフォトグラファーの連作。一場面一場面ごとに恐ろしいほどに構図が計算され尽くしている。矩型の多用(角と水平垂直の正確さ)と陰影の深さ、そして画面の温度。温度が低そうな画面の中に暖かな光を感じるシーン(ネタバレ回避。てーかCMにバッチリおさまっているわな)。

なにかが動き(風に吹かれる写真)切り取られる静止画(青年が撮る写真)その対比。すべてが完璧すぎて。

そして、もちろんストーリーも難解ではあるが、台北で平凡に暮らす人々、不良集団、カメラマン志望の青年、何の関わりもない人々が巧みに絡み合っていくスリル満載の構成。

なんという大傑作を見てしまったのでしょうか。

 

私はすっかり虜になってしまいました。

『カップルズ』『恋愛時代』をチンケなブラウン管でうすらぼんやり漫然と観ていたあの頃の俺に便所スリッパで一撃食らわせてやりたい。ちゃんと観ろよ!正座して観ろよ!

 

そんなエドワード・ヤンショックとでも申しましょうか、

吹っ飛ぶほどの衝撃を受けたこのちっとも映画に詳しくないバカですが、

まぁ10年ほど前のドリパス騒動(過去記事をご参照ください)で

 

 

ohirunemorphine.hatenablog.com

 

エドワード・ヤンにはまだ隠されたお宝があるらしい!ということは知っていたので

ますます 

 

死ぬ前には観てぇ

と思うようになったのでありました。

その思いはさらに2年後、

カナザワ映画祭2016

「上映します!」とぶち上げたことにより

急激な展開を見せることになるのですが……

 

つづく。

 

                         いくらなんでもマクラ長ぇよなぁスミマセン!