映画について私が全然知らないいろいろな事柄

@ohirunemorphine が、だらだらと映画についてあれこれ考えます。

第19回東京フィルメックスが終わって、私の冬がやってきました。

今年の映画祭ラッシュで驚いたことがあります。

 

毎日毎日毎日毎日朝から晩までどっかの上映観てる人が

世の中にはこんなにいるんだってこと

 

いつ寝てるの?いつ起きてるの?電車とか乗ってんの?

そもそも

 

おうちにちゃんと帰ってるの?

 

そんな映画好きというよりむしろ尊敬の念を込めて放送禁止用語すら持ち出したくなるような方々の

情報を網羅し、適切な作品を選択し、チケットを確保し、いついかなる時間でも

 

そこに時間通りに行く

 

という、秘書と運転手でもいるんですかっていうような自己管理能力に恐れおののいております。

 

私自身は、(なぜか秋に集中している気がする)特集上映の全てを網羅してると

そもそも働けねぇということは収入がねぇ

 

自分が従事する仕事はバカでもできるとはいえ、ある時間拘束され、「時間を売らない」限りは安酒も呑めず睡眠も取れない。

俺は睡眠に課金しています

そして

 

毎日真っ暗な中で過ごして終電で帰宅ってのは自律神経にきませんか

 

やられました。腰と全身の筋肉と自律神経が。ただでさえ息してない自律神経が完全に逝かれました。

 

眠れない薬が効かない

めでたく一旦眠れたら今度は起きられない

 

というわけで

東京国際映画祭東京フィルメックスも前半でバテバテになり

後半戦はお昼の上映にすら間に合わないという体たらく

もう諦めて 今日は行かね とお家から出なかったら

その日にかかった映画がグランプリだったりするわけですよ

 

というわけで前置きが長うなりましたが、

第19回東京フィルメックスについての雑感を書いてみましょうかね。

改めてこちらをどうぞ(とサイトを示す雑ブログ)

filmex.jp

 

その豪華さにおののいた今年のラインナップ。

しかし、例年「なんとなく傾向はあるな」と感じてきたように

今年もしっかり「トレンド」はありました。

正直、「……またぁ?」と思わせるレベルで。

世界各地で似たような民話や伝承が同じような時期に発生する、という民俗学的な説でも納得します。

 

今年の傾向は

「フィルムノワール

「自と他、現実と夢(あるいは銀幕の中外)の融合」

「見知らぬ男を助ける」……

そしてウォン・カーウァイ

コンペ作にとどまらず、アミール・ナデリの最新作までバッチリそんな感じ。これはどういうことなんだ。

 

審査員特別賞、ペマツェテン監督『轢き殺された羊』。

これは実際にウォン・カーウァイがプロデュースした作品で、「西部劇テイスト」を無理くりフィルムノワールに当てはめるとすべての要件をクリア。

 

いやこれすごく面白かった!

実はフィルメックスでペマツェテン監督作を観るのは初めてだったので、この洒脱なユーモアが「もともとそう」だったのか、ウォン・カーウァイの影響なのかがわからないのが残念です。

 

いかつくも心優しく信心深いトラック野郎と、

小汚くも端正かつどことなく育ちの良さを感じさせる旅人、2人の「ジンパ」。

旅は道連れ世は情け、袖すり合うもなんとやら、マニ車の回転もかくや、「輪廻」なる概念をも思わせる2人の縁。

スタンダードの画角は無駄に「辺境」を売りにすることのない収まりの良い大きさで、

肝心の2人の顔を正面から撮っても「顔を半分しか映さない」。

荒野を突き進むトラックの轍の跡を彩るのは なんと「オー・ソレ・ミオ」大音量w

 

 

トラック野郎ジンパが、轢いてしまった羊を律儀に弔うシークエンスも最高です。

戸惑う坊さん、茶々を入れる寺男

そして「羊の恩返し」のように、それからの物語は転がっていくのですが……

 

羊肉半身分(ワイルドに売られてる食用)を担ぎ、

茶館で食らうは

肉1キロ(骨つきをセルフで削り取りながら食う)

まんじゅう15個

お茶ガブガブ

怪しいバドワイザー2本謎の作法あり

それでもまだ食うんか!

 

実は飯テロ映画。

 

色っぽい茶館の女主人が語る旅人ジンパの物語は、そっくりそのままトラック野郎ジンパの「いま」そのまんま。(ここの撮影が超かっこよかった)

この2人の境目はどんどん溶けてゆきます。

 

そんな夢とうつつの曖昧さはチベット箴言に基づいているらしい。

だから、たぶんしばしば現れる「回転」のモチーフ(トラックの車輪、茶館のじいさんが回すマニ車、そして2人のジンパの、円環を思わせる縁)が説得力を持つ。

 

そうなんだよな、

今回ぼんやり今年のトレンドと受賞作を眺めていて

ハイレベルにもほどがあった出品作の数々の中から受賞するっていうのは

「裏がしっかりしている」からなんだなぁ、と思ったんです。

 

スペシャル・メンション、広瀬奈々子監督『夜明け』。

川べりで気絶している男を助け、連れ帰り世話をする初老の男。

なぜ彼がこんな素性も知れぬ怪しい男に親切なのか。

 

この作品には、先に挙げた「見知らぬ男を助ける」「自と他が曖昧になる」ふたつの題材が見られる。

他者として扱われる自己と、それに応え、越えてしまいそうになる自己。

しかしその理由は恐ろしいほどの「投影」であり、過剰なまでの「共同体への幻想」であり、自己を捨て共同体に取り込まれそうになっていた男は、そこから自らの力で脱出する。

公開が間近ということで、抽象的な表現になってしまって歯がゆいが、このように「きっちりした裏付け」があるというのは強い。そして、私が個人的に好感を持ったのは

 

・溶けそうになった自我を取り戻すことに成功し、絡め取られた網から逃げ出すことに成功した

・「家族」「絆」と、善きものとされている概念を疑い、その薄気味悪さを描けている

 

ここなんだ。

溶け合った「自」と「他」、そのままこの世ならぬ世界に行ってしまう作品が多かった。「自我を取り戻す」までを描ききった作品、意外となかった。

そして「絆」の薄気味悪さ。絆、縛るものだよ。なんでそんないいものだとされているの?

 

もちろん、是枝ブランドは強いなぁ、とも感じている。監督自身も「恵まれていた」と語る。そりゃそうだ。是枝のコネクションをフルに使えるんだから!

そして、「イレギュラーな家族」を描き続けてきた是枝監督のお眼鏡にかなったこの企画。やっぱりなんつーか、「是枝の直系」だ。

この先、「脱皮」できるか? 

(どうでも良いが、監督がこの作品を作るきっかけとなったのは東日本大震災だというが、この作品からは震災の影響は感じない。あれから日本にはいろいろな災害が起き、「日本全国総被災地」だ。「震災」「フクシマ」からインスピレーション受けた、というのはなぜこんなに多いのか。)

 

個人的に今年の目玉だった、ビー・ガン監督『ロングデイズ・ジャーニー、イントゥ・ナイト』。

学生審査員賞を受賞しましたが、

 

これ扱い難しかったんじゃないかなぁ。

映画そのものが壮大なる実験なんだもん。

で、先ほどの「今年のトレンド」では、「フィルムノワール」「銀幕の内外の融合」「ウォン・カーウァイ」3つにあてはまる。

 

てーか今日本の自主制作界隈で「クロサワの弟子」がぞろぞろ出てきてるのと同じように、

「新鋭が巨匠となった今」フォロワーがぞろぞろ出てくる頃なのかな。

TIFFジャ・ジャンクーっぽい作品、出てたよね)

 

ウォン・カーウァイがアジアの若い作家に与えた影響半端ないんだなぁ。

もう青いネオンに赤い照明、雨ざんざかの画面見ると全て「あー」と思っちゃうよ。そこからどう「脱出」するかこの先の楽しみになるのかもなぁ。

 

結構賛否両論のこの作品でしたが、個人的にはここまで風呂敷広げてくれると好きにならずにいられません。冒頭の人を食ったような注意書きを忠実に実行する観客の皆さんが素晴らしい。

前半が好き、後半が好き、そもそもどちらもわけわかんなくて苦手、そもそも3Dにする理由がわからない、などもう言われたい放題ですが、ありったけの実験精神をここまでスタイリッシュにまとめた手腕と、個人的には

 

後半の超長回し、セットかロケか知りませんけど、

ものすごいダンジョン感で、この動線考えた人天才なんじゃないかと思う。

深さ、高さ、低さ、奥行き、素晴らしいとしか言えない。

その上で思わせぶりな前半部を全て回収してるの。うまい!

だって前半全然意味わかんなかったんだもん。

予告編でカラオケ歌っている白いパナマ帽の男は主人公じゃないって案外気づいてない人多いんじゃないかしら、って言って自分でも自信ない。奥でぶら下げられてたのが主人公だよね?そのレベルでバラバラに放り出されたパズルのピースが、「夢」あるいは「映画内映画」で回収されていく小気味よさ。それをほぼワンカットですよ……大変な実験ではないですか。

いや、本当に夢のような映画体験で、私も行ったきり帰ってこられなくなりそうでした。

「映画体験」ってうっかり言ってしまいましたが、まさにその言葉がピシャッとハマる作品だったんじゃないかな、って思います。全体の出来が図抜けてた、というよりもむしろ。

来年の夏、ビー・ガン監督の前作『凱里ブルース』と一緒に公開されるそうですが、その時に3Dで観られるか、こんないい音響で観られるか、わかんないですからね。

 

さて。

グランプリの発表です。

 

これまでのフィルメックス受賞作の傾向って、やっぱりありました。「社会問題」です。

今回のコンペ作って、意外とそれを扱っているのがなかったんです。もしくは、隠し味として使われているか。その地域の問題を、より普遍的な物語として描いた結果、問題が薄れてしまった、という感があるものも(かえって、「ひとつのおとぎ話」として捉えることができた、という好意的意見もつけ加えておきます)。

そして、意外と「女性が強い」作品も、あんまりなかった。きょうびの流れ、ここはポイントかなぁ、と。

 

そして、何より私が「これが獲るかな」と思った理由は

 

私が観ていない作品であるということ

 

はい、予想は的中しました。

グランプリは、セルゲイ・ドヴォルツェヴォイ監督『アイカ』でした。

不法移民女性の過酷な運命を力強く描いた……とは言っても、観ていないんだからあまりいろいろ言えません。

 

フィルメックスに強いテーマって、やっぱりあるんだな、ということと、

今回、賞の授与にはかなりバランスを考えたんじゃないかなぁ。

中華圏からの出品多かったけど、台湾金馬奨と色々モロかぶりだったし。

 

繰り返しますが今年のありえないハイレベルぶりには、

 

あんまり客にいいもんばかり食わせちゃいけないよ!

客が肥える! どんな素晴らしい作品にもいちゃもんつけちゃう!

 

としみじみと感じた次第でございます。カロリー高ぇ。まぢで。

 

しかもどれもこれも演出が洗練されてんだよ…一時「見せたもん勝ち」的な品のないリアルばかりだった時もあったじゃん……あれ辛かったからさ……

 

しかも今回は開催期間に比べて上映作品がぐっと増え、1回上映で観逃した作品が多いことが悔やまれます。

丈夫な体と通いやすい家と

毎日通っても平気な財布が欲しいわ

 

実は、今年の目玉のひとつ、フー・ボー監督『象は静かに座っている』

これは観客賞がなければないな、と思っていました。

観客賞は近浦啓監督『コンプリシティ』。なんと開会式+ホン・サンスの裏でやっていた作品です。

開会式を蹴って行く客が多い映画……そりゃファンが多そうです。

もっとも、今年の観客賞投票はQRコードでの投票、どうやって集計して結果出しているんだろう、と統計方面的に不思議だなと思ったりもしてしまいました。

 

テキストばかりで延々のんべんだらりと書いてきましたが、

秋の例大祭、終わりました。

東京国際映画祭東京フィルメックス

対照的なこのふたつの映画祭。

 

お金のかけどころを間違ってる、としか思えなくなってきたTIFF

レッドカーペット、いらないんじゃないかなぁ。

開会式のお偉いさんの口から出る『東京物語』。本当に見たことありますか? 私はないです!

審査員長の苦言も「リアリズム一筋の人に言われたくないなぁ」とちょっと反発したりしたのは事実ですよ。映画に対するスタンスはひとつじゃないはず。

だから今回TIFFコンペについては何も感想はありません。もうコンペですらなくていいと思う。セレクトは面白いんだから。

 

フィルメックスの開会式はわずか10分

存続の危機を乗り越えた感謝の言葉が、フツーに淡々と述べられ、

普段着の審査員たちが控えめに壇上に立ち、それだけ。

さっさとオープニング作品上映へ。

 

去年まではセレモニーじみたものはありました。それをばっさりカットしたという、潔さ。それで十分なんです。

審査委員長のウェイン・ワン監督も「レッドカーペットがないところがいい」と言ってましたよね(通訳さんが訳し忘れて、後で漫談みたいに訂正してたので、私の英語耳が正確かどうかちょっとおぼつかないのですが……ってか、アワードってそんなゆるくていいんだ! と、司会進行はミスが許されない、と叩かれてドロップアウトした自分にとっては目から鱗でした)

 

あとどうしてもフィルメックス公式ゆるキャラナデリンを据えることはできないかw

朝日ホールに住んでるんじゃね疑惑!

 

さて。

秋最大の楽しみだった東京フィルメックスが終わり、

日常が帰ってきます。

働かなくちゃ、と思いながらも

 

思うように日程が埋まらなくてどうしようと思っている……そろそろ冬。

通いやすいところの仕事くださいできれば都内しかも屋内がいいです

東京国際映画祭の意義って。

コンペ審査員長ブリランテ・メンドーサ監督のコメントが凄いですね。

https://eiga.com/news/20181106/8/

 

まぁ年々規模が縮小されていってるTIFFの悲しさはほうぼうで実感しましたが、

ここのコンペの小粒感はいまにはじまったことではない。

 

しかし、それでも毎年光る作品が出てると

私は思っているのですが、

今回の受賞結果はほぼ3本の作品で分け合ってるのは何故だ。

 

私の選球眼のなさはもう自覚してますし、

この3本どれも観ていないのでなんとも言えませんが、

 

芸術性と娯楽性の両立は不可…

ザ・芸術、というしかない作品や

強烈なストーリーテリングに滲む確固とした作家性を感じさせる作品が

ガン無視されてる時点で

 

趣味の問題じゃね?

 

と若干クールに捉えてしまいましたよ。

 

メンドーサ監督はハードな社会問題を背景に作品を撮る人、という印象がある。

あくまで現実の問題ありき、で作品を撮る人なんじゃないかなぁ。

たぶんね。

 

まぁ今回もいつものことながら映画で世界一周的ラインナップ(総花的ともいう)ではありましたが、

『テルアビブ・オン・ファイア』なんて

実際の複雑極まりないパレスチナ問題をちょっとスパイシーなコメディにくるんで、上質にまとめた素晴らしい作品でしたよ。

これもナシってことですか?

 

『ザ・リバー』はどうやら観客から

カザフスタンの現実を描写しているとは思えない」という意見が出されたようですが、

 

べつに現実描かなくてもよくね?

(この作品については近日ちゃんと書きたいと思っています。意図的に閉ざされたユートピア、闖入者によってそこに綻びが生じ、緩やかな、しかし確固とした力関係が生じていく過程を描いていると感じました)

 

日本映画は…

これはもう話題作りとして捉えたほうがいいんじゃないかしら…

「箔づけ」という言葉が浮かびました。

きっといい作品は先に海外行っちゃうんだよ!

 

プレミアにこだわって小粒な作品しか集められなかったのか、

そうじゃないのかは私は知らない。

でも、ここに来る前にすでに他の映画祭で受賞している作品だってたくさん来てる。

 

しかし、ここでグランプリとっても公開されるとは限らなかったり(『ウィー・アー・ザ・ベスト』とか……『グレイン』難解すぎだけどジャン=マルク・バールだよ……)、マニアックなミニシアターでの公開だったり(その次の作品は話題になったけどね!サフディ兄弟!)

 

運営が審査員側につけた注文が焦りを露骨に感じさせるよね。『最強のふたり』みたいな作品を出したい、みたいな。

 

けどもしメンドーサ監督なら『最強のふたり』でも評価しないんじゃないかなぁ。

 

プログラマーが良くも悪くもバランス感覚がありすぎる方なんじゃないかなぁ。

私は好きですよ。

 

実は開会式に端っこで参加してて、

そのあまりのお役所の「わかってなさ」に

全てがすべってる……とため息が出たのですが

いろんな点でお役所感はあるよなぁ。

クールジャパン連呼!寒いよ!

そんな中、部門部門はそれぞれ頑張ってるとは思う。私は毎回楽しみにしてる。

 

もうコンペなしでいいかもしれないね、

小文字のtiffみたいにさ。

そうしたら観客賞だけで丸く収まる。

 

で、矢田部さんセレクトの作品たちは「やたコレ」として1部門を占拠すればいいんじゃない?

 

いろんな意味でそろそろTIFFのあり方を考えなおしたほうがいいんじゃないか、と思ったりもしましたが、

フランス映画祭みたいに、ただの有料先行上映会みたいにはならないでほしいなぁ……

東京国際映画祭・東京フィルメックス2018 極私的みどころ(後半)。

TIFFチケット発売されましたが、

 

案の定鯖落ちから始まるw

いい加減学習していただきたいものですが、

むしろ観客が学習したとも(私は発売時刻には寝てたか仕事してたかどっちかでしたよ

 

どうせ時間通りにアクセスできんよ

そして

 

どうせ戻り出るよ……

(『ROMA』の劇場公開結局なさそうってのが……)

 

戻りを……戻りを待つのです……マメにページをチェックするのです……

 

さて。

秋の例大祭第2弾・東京フィルメックス

 

すげぇ!

すげぇよ!

スポンサー変わってどうなることやらと思ったけど

むしろやりたい放題じゃん!いいぞもっとやれ!

 

しかし

このすごさをどう伝えたらいいのか

わたしの乏しい語彙力ではおぼつかない。

 

まずコンペ部門をしげしげ眺めてみる。

東京フィルメックス・コンペティション(全10作品) | 第19回「東京フィルメックス」

 

例えば

セルゲイ・ドヴォルツェヴォイ『アイカ』。

この監督すでに『トルパン』(2008)でTIFFグランプリ獲ってるし、

この作品じたいカンヌで最優秀女優賞を獲ってる。

また、フィルメックスおなじみペマツェテン『轢き殺された羊』。

すでに『オールド・ドッグ』(2011)でグランプリ、『タルロ』(2015)で作品賞・学生審査員賞。

そして今作はヴェネチアオリゾンティ部門脚本賞

プロデュース、ウォン・カーウァイですってよ。そそられませんか?

  

しかしわたしは過去上映された2本とも見逃している……なぜだ……こればっかりはタイミングなんですぅぅぅ

大慌てで『静かなるマニ石』(2005)を観に行ったものであります。

 

      てか過去作観る機会欲しいわ

 

かように比較的ヴェテランと言える監督と

初長編作、とか、2本目、とかのフレッシュな顔ぶれが混在します。

 

ホー・ウィディン『幸福城市』。

これは中華圏電影好き皆々様が激推しでした。

不勉強にして監督は知らなかったのですが、キャストが

李鴻其(リー・ホンチー)……(『酔・生夢死』(2015)の「ネズミ」!どうしてももう一度観たかったのでがんばって観た!)、高捷(ガオ・ジエ)、丁寧(ディン・ニン)、尹馨(イン・シン)……に加え、

Maydayの石頭(Stone)ですって!そら推すわ!

 

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ビー・ガン『ロングデイズ・ジャーニー、イントゥ・ナイト』。

ワンカット長回し映画が最近話題ですが(ポンっ‼︎

この作品も1時間の長回し しかも

3D

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ですってよ。

 

てーことは有楽町朝日ホールの皆さんに3Dメガネが配られるのかしらね。あのレトロな場内に青と赤の浮かれメガネがぎっしり、という光景が見られるのかしらね。

というのはともかく、予告編超かっこいい!これ観たいなぁ。

 

さて。これを忘れてはいけません。

フー・ボー『象は静かに座っている』。

 

 

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これについてはちょっと私は黙っていた方が良さそうです。

ティーチインは絶対聞き逃せないと思います。

4時間の長尺ですが、観なくてはならない作品だと思います。

 

他にもヴェネチアオリゾンティ部門で最優秀作品賞を獲った、プッティポン・アルンペン『マンタレイ』、ロカルノで上映された3本、柳楽優弥を主演に迎えた作品など、どれもこれも、全部観たい!

   やろうと思えばできちゃうけど

  その間働けない!どうしよう!(働けよ)

 

続いては特別招待作品部門。

特別招待作品 | 第19回「東京フィルメックス」

これもまた

 

痒いところに手が届きまくったラインナップ

 

オープニングがホン・サンス、オープニングじゃないのももう1本(どんだけ撮りまくってんだよ!どんだけキム・ミニちゃんがかわいいんだよ!)

クロージングがジャ・ジャンクー

 

アモス・ギタイリティ・パンスタンリー・クワンブリランテ・メンドーサ

昨年は俳優としてのご参加だったティエン・チュアンチュアン

そしてそしてツァイ・ミンリャン!やった!

ちょっともうこれは。ねぇ。

 

とは言っても今わたし監督名しかつらつらあげてないよね。

「監督で観る」層を掴んでる監督たちだよね。

安心と信頼のブランド揃えました、って感じ。

 

とは言ってもアモス・ギタイって劇場公開あったかしら。

調べたら1本しかなかった。

他にも「必ず劇場でかかります」って約束されてる監督は1人か2人しかいない。

ホン・サンスですら今年まとめて上映されるまではしばらくかからなかった。

ツァイ・ミンリャンですら劇映画を作らない限りはあやしい。

ここでしか観られないんかもしれないのですよ。

 

さらにさらに、サンセバスチャン映画祭受賞作 奥山大史『僕はイエス様が嫌い』これは面白そうだなぁ。

 

今年の特集上映はアミール・ナデリ。

特集上映 アミール・ナデリ | 第19回「東京フィルメックス」

西島秀俊さまがボッコボコにされるのがたまんない『CUT』(2011)でご覧になった方も多いことかと思いますが、

劇場に入ると必ず監督がどこかにおり、

 

 

劇場の鎮守の神ナデリン

的な

おれの中ではすっかりゆるキャラ的な存在として認識されていますが(すみません)

1070年代からのながーーーいキャリアを持つイラン映画の巨匠であります。

言うまでもねぇや

 

今回、初期作品『ハーモニカ』(1974)『期待』(1974)と、

今年の2本『華氏451』(脚本アミール・ナデリ 監督ラミン・バーラニ)『マジック・ランタン』が上映されます。

ちょっと概要を読む限り、『CUT』や、『山<モンテ>』(2016)とは違った感じなのかしら。あの2作はめちゃくちゃハードボイルドでございましたなぁ。

 

ざっと駆け足でご紹介してまいりましたが、

まぁ春先のスポンサー関連のゴタゴタで我々をざわつかせた後

この力の入ったラインナップでございます

ありがたく拝見し、

 

そして来年その次も無事に開催されることを祈りましょう……

そしてそのために私たちに何ができるかを

ちょっとだけでも考えた方がいいんじゃないかな、ともふと思いました。

 

真面目かよ。

 

 

注・人名の表記は今回東京フィルメックスからの公式リリースに従いました。

  ご興味を持たれ検索された方やお詳しい方お気付きのように、

  各サイトによって表記に揺れがあります。

  

  まぁもろもろ基準になるのはImdbなんじゃないかね(困惑) 

 

東京国際映画祭・東京フィルメックス2018 極私的みどころ。(前半)

効率的に働かなくてはならない秋でございます。

なぜなら、必ずあけておかなければならない日があるからです。

負けられない闘いがある日だってあります。

       負けることも結構あるけどね(主にチケット争奪戦)

 

おれはに命を賭けてんでぇ

 

      うん、知ってる。バカです。

 

2018.tiff-jp.net

 

filmex.jp

 

今年のTIFFはオープニングが『アリー/スター誕生』ブラッドリー・クーパー監督

ということで気になるのは

 

ガガ様レッドカーペットにご降臨なさるのかどうか

      そこかよ

 

あとコンペにこれが入ってることだな。『半世界』阪本順治監督

ということで気になるのは

新しい地図のあのお方はレッドカーペット及び舞台挨拶に立つのだろうか

       やっぱそこかよ

 

どうしたって東京国際映画祭のメインイベントはレッドカーペット、と

すでに出オチ感満載ではありますが、

私はここのコンペは結構楽しみにしております。

 

いささか渋すぎてグランプリとってもなかなかかかる機会に恵まれない、とかそういうことも含めて

第24回の『最強のふたり』はちょっと特別だったんだなぁ、と思ったり(観てないけど)

 

あと好きなのはワールドフォーカス部門だったりします。

過去、ここで「あぁめっちゃ良かった、しかしもういつ観られるかわからない」と身悶える作品に何本も出くわしたこともございます。

「その監督」の映画がここでかかることを心待ちにしていたりもします。

 

今年の本数えらい減ったなヲイ

 

なぁんだろうなぁ?

各所特集上映とかと完全に棲みわけちゃった感すらある。

春先にはカイエ週間とかもあるじゃん?

アジアの風部門は……フィルメックスと棲みわけたかなぁしかし油断ならないなぁ

と思ったらとんでもないことになったことを後ほど力説したい

 

スケジュールざっと見てみたら

最終2日間くらい

各受賞作の上映に割り当てられてるのね。

最優秀主演なんとか賞とか最優秀なんとか貢献賞とか。

観客賞とグランプリに至っては2回くらい設けてある。

去年までこんなきめ細やかだったかなぁ

 

てーかアワードいつかよくわかんないよ

え?11月2日……もろもろ勝手がわからんなぁ

 

まぁ受賞作がわかってから観る、という安心感もあるよね。

特にコンペ作は上映機会多いほうがいい。

見逃してた作品を観られる機会はあったほうがいいよね。

てーかスケジュールどこよ?

私がどこかで見たのは幻だったのだろうか?どこでみたんだっけかなぁ

ありました!

 

さて。

そんなこんなで「スケジュールによっては全通の必要ねぇかなぁ単発でバイト入れちまうかなぁ」と思っちゃったような今回のTIFFですが、

それでも「うぉっ」という作品はございます。

それではご紹介しましょう。

 

コンペティション部門から。

エミール・バイガジン監督『ザ・リバー』。

2018.tiff-jp.net

この監督、東京フィルメックス2013のコンペに『ハーモニー・レッスン』を出品しており、私はそのあまりの「絵になりっぷり」に心底もっていかれたものでした。すでにベルリンで受賞していた作品で、フィルメックスでも芸術貢献賞を獲っています。

今回TIFFコンペに選ばれた『ザ・リバー』も、先日のヴェネチアオリゾンティ部門で監督賞を獲っており、

今観られるわずかなスチールだけでももう私どうかしそうです。

(と、今更今年のヴェネチアのおさらいをしていましたが、けっこう来るみたいですよ!)

 

続いて、

ファイト・ヘルマー監督『ブラ物語』。

2018.tiff-jp.net

直球すぎるタイトルですが、

公式サイトみたらさらに直球だった!

 

クストリッツァ作品には欠かせないミキ・マノイロヴィッチ

『ルナ・パパ』(1999)が忘れられないチュルパン・ハマートヴァの共演ってだけですでにそそられ感満載ですが(すみません、パス・ヴェガはちょっとパッと思い浮かびませんでした)

これ、セリフがないんですって!

で、よくよく見てみたら、『ツバル』(1999)がファイト・ヘルマー監督の処女作だったのね。あれもセリフがない映画でした。可愛い映画でした。ドニ・ラヴァン出てたなぁ!

 

あれ?ラヴァンも出てんじゃん!

これも観るしかねぇな。たのしみ。

 

次はこちら。

陳果(フルーツ・チャン)監督『三人の夫』。

2018.tiff-jp.net

昨年のTIFFで、『メイド・イン・ホンコン』のリマスターが上映されたフルーツ・チャン監督の新作です。

これ、発表記者会見の壇上で、みなさんお馴染み矢田部さんが

「セックス」「セックス」「セックス」と真顔で連呼するレベルで

めっちゃ激しい映画らしいのですが、

そういえば私が観たチャン監督の映画って、割とエロスだだ漏れって感じ大だった気がするんですよね。うろ覚えですけど。割と忘れてますけど。

んで、改めて今調べてみたら、そんなに本数観てませんでした。でかいこと言えませんでした。すみませんでした。

というわけで、どっかで特集上映組んでくれねぇかなぁ、といううっすらとした期待を込めつつ、しっかりと観とかなきゃな、と思う次第でございます。

 

コンペはかようにエロスからどシリアス直球社会派まで各種取り揃えてお届けされちゃいますが、

引き続きましてワールドフォーカスから1本ご紹介しようかなぁと思います。

なんで1本なのか、っちゅーと、

 単純にまとまった文章書けるだけの知識がねぇんす

 

ではこちら。ルイ・ガレル監督『ある誠実な男』。

サン・セバスチャン映画祭で脚本賞を獲った1本……だそうです。伝聞です。

2018.tiff-jp.net

 

ご存知ルイ・ガレル。もはやオサレシネフィルだけのものではない、抜群の知名度と出演数。

監督もこなす才人です。 

  と言っても1本しか観る機会に恵まれておりません。英語字幕です。内容全然わかっちゃいません。

  『ふたりの友人』(2015)、カンヌにも出品された作品だそうです。

  アンスティチュ・フランセとかで時々かかりますが、

  なにせ英語字幕なのでマジでわからぬ。私はもっと英語を読む訓練をした方がいいのかもしれません。

 

まぁこれまでご本人の役どころが結構ミステリアス破滅的刹那的な若者像が多かったので、時々「いい人」的な役に当たるとちょっとビックリしちゃうんですけど、紹介文読む限り「いい人」モードなのかしらね。まぁ出演数多いからひとくくりにしちゃうのも申し訳ないんだけど。

どちらにしても日本語字幕で観られるのは嬉しい。

グッバイ・ゴダール!』でみっともないお姿をおさらしになった後ですので、ちゃんといい男っぷりを見せていただきたいものでございます(ほんね)

 

しかしこの人歴代の彼女さんをキャスティングするのかそれとも監督–役者の関係そのままにくっついちゃうのかどっちなのだろうと思う私は下衆の勘ぐりでございます

 

妹のエステル・ガレルが、兄貴の若い頃にメチャクチャそっくりさんなので、大物になりすぎた兄貴の代打いけるんじゃねぇか、とくだんねぇことを考えたりもしたことよの

 

ワールドフォーカスでは、

『世界の優しき無関心』も興味があります。

2018.tiff-jp.net

これは本当にまっさら、なんの知識もなく見ます。

監督も知らない、役者も知らない、ストーリーも知らずに、

真っ白な状態で観たいと思います。

 

過去、この部門では

ブリュノ・デュモン、ヴィエゴ・オウンプーなど、

知識なく観て「次もぜひ」という監督の作品がたくさんありました。

今回はだいぶ規模が小さくなってしまったのでちょっとしょんぼりですが、

いい映画をいっぱい観られるといいなぁ、と

思っております。

 

はぁ疲れたのでフィルメックスの件は後で書くよ!

こっちはメガトン級のラインナップにおののいたんだから!

 

 

 

危ない男。(追記しました)

少し前からの話をいたしますと、

6月後半から、空梅雨から台風といきなりの猛暑、

朝4時起き7時半出勤という個人的サマータイム

そして続く猛暑による夏バテが抜けないまま、

今に至っております。

 

やっと食べられるようになってきました。

やっとパソコンに向かう余裕が取れるようになってきました。

 

ちゃんとした映画の話でもしたいところですが、

ものすごく身のない話でここはお茶を濁しておこうかと思います。

まぁ、リハビリみたいなもんだよね。

 

今までちゃんとした映画の話なんて書いたことがないのは無視してほしい

 

先日、国立劇場で、文楽公演「夏祭浪花鑑」

www.ntj.jac.go.jp

を観てきたんですよ。

 

歌舞伎は年何回か観る程度には観ていますが、文楽は初めて。

この演目は、歌舞伎でも夏になるとかかる有名なものです。

しかし、歌舞伎ってその作品の美味しいところだけをかけることがほとんどなので、

ここまでしっかりその物語を語られたのは初めてでした。

 

本筋ではないので、あんまり詳しくは書かないでおこうと思いますが、

歌舞伎では、団七徳兵衛の義兄弟の契りや、自らの顔を焼いてまで筋を通そうとする徳兵衛妻お辰、そして団七が義父である義兵次を殺す凄惨な場面が見せ場であります。

この文楽公演では、普段歌舞伎で上演されない部分も合わせてみせることによって、

物語が「ひとりの人物」によって進んでいくことが示されるんです。

 

玉島磯之丞。

歌舞伎での出番はごく少ない、ええしの頼りないボンです。

女ったらしで、つっとつつけばすぐ転ぶような、どうしようもないボンです

しかし、物語ではこの人物をめぐって、俠気と女の意地と、義理となんとかが絡み合う、壮大なストーリーが語られるのです。

 

はて、終始このダメ男をめぐって、いきの張り合いがなされるこの話。

なんでまた、こんなしょうもない男のために?わっけわかんないよ。

(いやこの話には義理やお金も絡んでいるのでまぁわからんでもござんせんが)

 

しかし。私は認めざるをえません。

人間、ダメな子を見ると守ってあげたくなります。

ダメな子がいい男であれば益々です。

 

ごめんなさい個人的な主観です完全に

 

私、ダメ男はあかん、嫌い、ヤダ、とずっと言い続けてきたんです。

すみません、選べるような立場ではございませんのでイヤもヘチマもありませんが。

しかし。

 

あー好きです、と無条件に言ってしまう映画のキャラクターって結構ダメダメの極みだったりしますよね。

ブエノスアイレス』のレスリー・チャンなんて絶対お近づきになりたくない。

しかし……(この3点リーダーに込められた気持ちを140字で述べよ。句読点は含む。)

 寂れた競馬場でギャーギャー喚くレスリーの場面が大好きだったりするんだけど、画像が見つからなかったので各々脳内でお願いします

 

クリストフ・オノレ美しいひと』のルイ・ガレルの「たらし」っぷりと、その後のモタモタの魅力を端的に答えよ。

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答・美しい。頭が悪い答えですまん。

 でもだいたいこれまでのルイ・ガレルの役どころってどうしようもない破滅的なものが多い感じがするよね。死ぬ確率と言ったら俺の中ではいとしのブシェミたんとタメ張るレベル。

そこから一気に『グッバイ・ゴダール』……膝がかっくんしました。おい!気でも違ったか!

 

マチュー・アマルリックの『愛の犯罪者』では「食おうとして全力で食われにかかってる」小動物的なプルプル感がどうにも愛おしくてたまらんのですが

 

      胸焼けしてきたので本丸に行こう

 

じゃぁ本丸。

個人的に「やばい」「しぬ」と思わせるのが

 

森雅之

殺されてもいいですか

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不幸にして私はあんまり昔の日本映画を観ていません。

お恥ずかしながら神保町の名画座は敷居が高くて、

通い始めたのはごく最近のことです。不規則な仕事には優しくないんだよあそこ。

そこで見た「浮雲」に完全にノックアウトされました。しぬ。だめ。やばい。

 

奥さんがいながら高峰秀子さまと岡田茉莉子さまのはざまをフーラフーラと。

そこに愛なんてあるようでない。たぶん全然ない。

身勝手で、わがままで、甲斐性がなくて、しぶとくて。

我が身だけがかわいくて。

奥さんが亡くなったときなんて葬式の費用をオンナに無心してケロっとしてて。

 

本気でダメじゃん

 

伊香保の温泉街、わりと私はひとりでぶらっと行ったりしてたんだけど、

あー見るとダメだね、

温泉街って本気で色恋沙汰が似合うね

 

そっか、

こういう時、人は理性を吹っ飛ばすんだ

 

品が良くて、やさぐれてて、ほっとけなくて。

まぁ考えてみたら「つっころばし」って、ええしのボンで、教養は高く家柄は良かったりするんだ。

森雅之なんてお父さんは有島武郎、お母さんは男爵家、学校は京大まで行っとる。色恋沙汰と教養にまみれた生い立ちであることよ! 

まぁ見た目からして女と入水でもしそうではありますが、そっちはお父さんがかなり悲惨な状態で発見されたということで。

もっとも、女の出入りは激しかったようではございますな。まぁ納得ではあります。これでストイックだったら私は色々疑うわい。

 

安城家の舞踏会』『白痴』をまだ観ることが叶っていないのはむしろ幸運なんじゃないだろうか。

多分やられるから。

 

さて、

現在神保町で、かつての乙女たちの腰を全力で砕きにかかっているという『白い悪魔』(1958)。

あそこは休日には朝の早いご老人で早々に埋まってしまうのでなかなか油断ができないのですが、

なんとか、なんっとか、仕事終わりに這ってでも行きたいと考えております。

 

私のうちは環境が貧弱で、

古い映画は名画座ででも掛からないと行かないからね。

 

普段ゴキキャップに囲まれて全力で虫がつかないような状態なんだから

スクリーンの中だけでもあかんドキドキをしたいっすよ。

 

()… と、言うわけで、行ってきました『白い悪魔』。

     かつての乙女や現在の乙女もっといるかと思ったらそうでもなかった

よくよく見るとスタッフがめっちゃ豪華!古い日本映画に詳しい人ならいくらでも語れるんじゃないでしょうか?

 

さて。

わたしが「あーこのオトコ、ダメ」と思う理由って「煮え切らなさ」なんだなぁぁ、としみじみ思ったのですが、それは私が割り切りが早い、というか「ここで割り切っとかなきゃあとがつらい」という、名残惜しくも損切りを心掛けて日々暮らしているせいかもしれず、

竹を割ったようでいて実は「質のよくない割り箸を割ったような」性質だからかもしれません。

白い悪魔野添ひとみ演じるアサコちゃんは無邪気でワガママで向こう見ずで、自覚が全くありませんが、

 

「パパのお嫁さんになる!」

 

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というムチャクチャな願望を隠そうともしていません。

小悪魔です。

しかもその行動は次第に小悪魔通り越して

 

大悪魔

 

と変化していくのです。こわっ。やばっ。可愛いで済まされんヤバさです。

 

対して森雅之「パパ」は

その煮え切らなさゆえ初恋の人を不幸に陥れたという負い目を長年背負い続け、

その娘であるアサコちゃんを引き取ります。

 

もうこの時点でインモラル感満載じゃないですか。

       ちょっとまて。

 

おもちゃ屋で駄々こねられるような無邪気な波状攻撃に、オトナの理性(というか煮え切らなさ)はどんどん磨耗していきます。

そして… 周囲を敵に回しても… 

 

        ぐはぁぁぁ

 

ニンゲン、自分にないものに魅力を感じるのだとしたら、

この煮え切らなさと懊悩の色気なんじゃないのかなぁと思います。

それをやらせたら天下一品のモリマ。

 

晩年の作品『カモとねぎ』での意外なコメディアンぶりではもっと軽やかで、自己パロディの余裕すら感じましたが、

やはりこの人は真っ当じゃない感情の陰影がよく似合うなぁぁぁ…

と思いましたよ。

 

実生活じゃぜってぇお近づきになりたくねぇけどな(こっちが壊れる)

 

 

 

お久しぶりです

少し前に書いた原稿ですが、よかったらお読みください。

そろそろ人の生き死にについて以外のパッカーンとしたやつについても描きたいなぁ

 

リチャード・リンクレイター30年後の同窓会』について、座敷牢のおばちゃんに話を聞いて来ました。

 

http://kotocine.blogspot.com/2018/07/1230.html?m

【ネタバレ有】ダミアン・マニヴェル監督ご推薦の映画について。ウジェーヌ・グリーン『ジョゼフの息子』。

先日のカイエ・デュ・シネマ週間では

泳ぎすぎた夜』の宣伝も兼ねてか

ダミアン・マニヴェル監督ご推薦枠で1本の映画が紹介されました。

ウジェーヌ・グリーンジョゼフの息子』(2016)です。

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(2018.12.17追記

   思わぬカイエ週間での再上映でご訪問アクセスがっと増えありがたい限りですが、

以下ガッツリネタバレしております。

ネタバレお嫌いな方はお読みにならないようお願いいたします。

読まんでくれ、という羽目に陥るとは思わなんだ…… 申し訳ありません。

 

 

 

これ、冒頭は大聖堂ドーン、オペラばーんで今にも ものすごく重厚な物語です って顔して始まるの。

うぉ、大丈夫か俺。

第一幕「イサクの犠牲」 そしてどどんと映し出されるカラヴァッジオの絵画。

 

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おフランスのアート映画… インテリ向けっぽすぎ…

とかなり身構えていたのです。

が。

 

のっけから

「仕事手伝ってほしい」「なんの仕事」的高校生男子二人のやりとりが

ひゃひゃひゃ

ってな引き笑いを誘い、そっからもう妙な可笑しみしかない、というね。

売るほど生産されるのかよそいつは… とこれはちょっと伏せといたほうがいい可笑しさ。

 

とりあえず予告編をご覧ください。

www.youtube.com

 

母、マリーと息子、ヴァンサン二人暮らし。息子は若干反抗期。

お母さんはお父さんのことを明かそうとしない。息子ヴァンサンはそれもあってかなり反抗的。

けど、知ってしまったんです、お父さんのことを。お父さんがお母さんを捨てた理由を。

ヴァンサンは仕返しに出かけます。

 

このクズ父を演じるのはわれらがマチュー・アマルリック

スノッブで軽薄なこのあたりの描写が本当にうまいの!

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クズ父のパーティーに潜入する息子。そこで頭が軽そうな人たちに話しかけられて口から出まかせで「自分は小説家だ」と適当なこと言うんだけど、「あら知ってるわあなたのこと」

適当すぎるだろ!

 

この場面は始終この調子なのだが、その辺にいる3人の適当な会話を映すカメラがいちいち

かくっ

かくっ

かくっ

そのザコの顔をきちっと映す律儀ぶり。やだなにこれ真面目なのかふざけてるのかおかしい!

 

まぁ物語を話しちゃうと、クズ父の事務所に潜入したヴァンサンはまんまとクズ父の捕獲に成功し、そのまま縛り付けて逃げ出すんだけど、

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その直前に父とその弟(彼が「ジョゼフ」ね)が会っており、逃げるところを弟(つまりジョゼフ)にうまく助けられるの。

父の弟と意気投合した息子は、彼を母、マリーと引きあわせる。父の弟と母、いい感じになる。

この時点で誰もその絡んだ糸に気づいていない

ただの母と息子と息子の友達、としか思っていない。

 

だんだんマリーとジョゼフがいい感じになってくる。

やがてジョゼフは「僕の育ったところを見せたい」と、一家で旅に出る。ノルマンディかなぁ、うろ覚えだけど。

 

しかしジョセフの生家では!

マリーを捨て、ヴァンサンに縛り上げられたクズ父がパーティーを開いていた!

例の軽薄な連中も一緒!

 

起こりうる事態。だってクズ父とジョゼフは兄弟なんだもん。

そのことに気づかないでのほほんとお家を見せていたジョゼフ。

そして

 

ヴァンサンとクズ父がばったり!

ストーカーがこんなところに!

クズ父、 

即通報!

 

逃げろ〜〜〜

 

ものすごい数の警官に追われる一家!

 

       さてどうなるどうなる?

 

さて。

ウジェーヌ・グリーン

ここで公式に近いところの日本語表記が出ましたが、

これもまた検索しづらい名前だよね。

アメリカ生まれのフランスの監督だそうです。

 

もともとは演劇方面の方だったとか。

だからかな。

画面がものすごくきっちりと構築されてるの。隙がない。

特に「人やモノの配置」に隙がないような気がする。

夜お散歩に出たお母さん、独り。

賑やかなお店には

カップ

カップ

カップ

カップ

カップ

おのおの様々にいちゃつくカップルが計算されたかのように配置されてる。

お母さん、独り。余計に浮かび上がる寂しさ。

 

ヴァンサンとジョゼフ、カフェのシーン。

真横から、左右対称の配置。

この綺麗な対称性が画面構成の基本かも。

  

これ、物語はかなり聖書が前提なんだよね。

マリア、ヨセフ、ヨセフとは血の繋がらないマリアの息子。この時点ではっきり

現在は立川にお住まいのあの聖人のご家族を思わせるよね

んで、

カラヴァッジオ「イサクの犠牲」ラ・トゥール「聖ヨセフ」、

フィリップ・ド・シャンパーニュ「屍衣の上に横たわる死せるキリスト」などの宗教画が象徴的に現れる。

でも、実はその知識は特にいらない。十分映画は楽しめる。

で、最後になって、絡みまくった糸は美しく回収されるんだけど、それぞれの「絡み具合」がわかりやすく描かれていてどこにもハテナマークの要素はなかったし、またとっても優しい!

これはダミアン・マニヴェル監督オススメだっていうのはなんとなくわかる。

シンプルで、優しい。

 

どーでもいいけどバイアグラでは生産性上がらないと思うの、高校生くん

 

さて。

私はだんだん薄れゆくこの映画の記憶を呼び戻すべく、あれこれ検索いたしました。

日本でも限られた上映機会しかないこの作品。あんまりたくさんのレビューは見つかりませんでした。

しかし、ここでも私がつまづいている、ある表現に出会ってしまったのです。

 

ブレッソン

 

ブレッソン的ってなに〜?

なんなんですか?

 

お恥ずかしながらブレッソンは「やさしい女」しか観たことがないのです。

結構上映機会あるはずなのに、ことごとく見逃しているのです。

なお、うちに録画した円盤はある。

 

最初にこの表現でつまづいたのは、

2013年にフィルメックスで観た、カザフスタン映画『ハーモニー・レッスン』(2013)。

filmex.net

(2013)。

これすっごく良かったんで、またどこかでかけてほしい作品なんだけど、

これのレビューでもよく出てくる表現なんだよね、ブレッソンを思わせる、って。

 

それ以来けっこうほうぼうで「ブレッソン的」なる言葉を聞くんだけど、

その正体は茫としてつかめない。

なんなんだろう、「ブレッソン的」って⁇