映画について私が全然知らないいろいろな事柄

@ohirunemorphine が、だらだらと映画についてあれこれ考えます。

東京国際映画祭・東京フィルメックス2018 極私的みどころ。(前半)

効率的に働かなくてはならない秋でございます。

なぜなら、必ずあけておかなければならない日があるからです。

負けられない闘いがある日だってあります。

       負けることも結構あるけどね(主にチケット争奪戦)

 

おれはに命を賭けてんでぇ

 

      うん、知ってる。バカです。

 

2018.tiff-jp.net

 

filmex.jp

 

今年のTIFFはオープニングが『アリー/スター誕生』ブラッドリー・クーパー監督

ということで気になるのは

 

ガガ様レッドカーペットにご降臨なさるのかどうか

      そこかよ

 

あとコンペにこれが入ってることだな。『半世界』阪本順治監督

ということで気になるのは

新しい地図のあのお方はレッドカーペット及び舞台挨拶に立つのだろうか

       やっぱそこかよ

 

どうしたって東京国際映画祭のメインイベントはレッドカーペット、と

すでに出オチ感満載ではありますが、

私はここのコンペは結構楽しみにしております。

 

いささか渋すぎてグランプリとってもなかなかかかる機会に恵まれない、とかそういうことも含めて

第24回の『最強のふたり』はちょっと特別だったんだなぁ、と思ったり(観てないけど)

 

あと好きなのはワールドフォーカス部門だったりします。

過去、ここで「あぁめっちゃ良かった、しかしもういつ観られるかわからない」と身悶える作品に何本も出くわしたこともございます。

「その監督」の映画がここでかかることを心待ちにしていたりもします。

 

今年の本数えらい減ったなヲイ

 

なぁんだろうなぁ?

各所特集上映とかと完全に棲みわけちゃった感すらある。

春先にはカイエ週間とかもあるじゃん?

アジアの風部門は……フィルメックスと棲みわけたかなぁしかし油断ならないなぁ

と思ったらとんでもないことになったことを後ほど力説したい

 

スケジュールざっと見てみたら

最終2日間くらい

各受賞作の上映に割り当てられてるのね。

最優秀主演なんとか賞とか最優秀なんとか貢献賞とか。

観客賞とグランプリに至っては2回くらい設けてある。

去年までこんなきめ細やかだったかなぁ

 

てーかアワードいつかよくわかんないよ

え?11月2日……もろもろ勝手がわからんなぁ

 

まぁ受賞作がわかってから観る、という安心感もあるよね。

特にコンペ作は上映機会多いほうがいい。

見逃してた作品を観られる機会はあったほうがいいよね。

てーかスケジュールどこよ?

私がどこかで見たのは幻だったのだろうか?どこでみたんだっけかなぁ

ありました!

 

さて。

そんなこんなで「スケジュールによっては全通の必要ねぇかなぁ単発でバイト入れちまうかなぁ」と思っちゃったような今回のTIFFですが、

それでも「うぉっ」という作品はございます。

それではご紹介しましょう。

 

コンペティション部門から。

エミール・バイガジン監督『ザ・リバー』。

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この監督、東京フィルメックス2013のコンペに『ハーモニー・レッスン』を出品しており、私はそのあまりの「絵になりっぷり」に心底もっていかれたものでした。すでにベルリンで受賞していた作品で、フィルメックスでも芸術貢献賞を獲っています。

今回TIFFコンペに選ばれた『ザ・リバー』も、先日のヴェネチアオリゾンティ部門で監督賞を獲っており、

今観られるわずかなスチールだけでももう私どうかしそうです。

(と、今更今年のヴェネチアのおさらいをしていましたが、けっこう来るみたいですよ!)

 

続いて、

ファイト・ヘルマー監督『ブラ物語』。

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直球すぎるタイトルですが、

公式サイトみたらさらに直球だった!

 

クストリッツァ作品には欠かせないミキ・マノイロヴィッチ

『ルナ・パパ』(1999)が忘れられないチュルパン・ハマートヴァの共演ってだけですでにそそられ感満載ですが(すみません、パス・ヴェガはちょっとパッと思い浮かびませんでした)

これ、セリフがないんですって!

で、よくよく見てみたら、『ツバル』(1999)がファイト・ヘルマー監督の処女作だったのね。あれもセリフがない映画でした。可愛い映画でした。ドニ・ラヴァン出てたなぁ!

 

あれ?ラヴァンも出てんじゃん!

これも観るしかねぇな。たのしみ。

 

次はこちら。

陳果(フルーツ・チャン)監督『三人の夫』。

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昨年のTIFFで、『メイド・イン・ホンコン』のリマスターが上映されたフルーツ・チャン監督の新作です。

これ、発表記者会見の壇上で、みなさんお馴染み矢田部さんが

「セックス」「セックス」「セックス」と真顔で連呼するレベルで

めっちゃ激しい映画らしいのですが、

そういえば私が観たチャン監督の映画って、割とエロスだだ漏れって感じ大だった気がするんですよね。うろ覚えですけど。割と忘れてますけど。

んで、改めて今調べてみたら、そんなに本数観てませんでした。でかいこと言えませんでした。すみませんでした。

というわけで、どっかで特集上映組んでくれねぇかなぁ、といううっすらとした期待を込めつつ、しっかりと観とかなきゃな、と思う次第でございます。

 

コンペはかようにエロスからどシリアス直球社会派まで各種取り揃えてお届けされちゃいますが、

引き続きましてワールドフォーカスから1本ご紹介しようかなぁと思います。

なんで1本なのか、っちゅーと、

 単純にまとまった文章書けるだけの知識がねぇんす

 

ではこちら。ルイ・ガレル監督『ある誠実な男』。

サン・セバスチャン映画祭で脚本賞を獲った1本……だそうです。伝聞です。

2018.tiff-jp.net

 

ご存知ルイ・ガレル。もはやオサレシネフィルだけのものではない、抜群の知名度と出演数。

監督もこなす才人です。 

  と言っても1本しか観る機会に恵まれておりません。英語字幕です。内容全然わかっちゃいません。

  『ふたりの友人』(2015)、カンヌにも出品された作品だそうです。

  アンスティチュ・フランセとかで時々かかりますが、

  なにせ英語字幕なのでマジでわからぬ。私はもっと英語を読む訓練をした方がいいのかもしれません。

 

まぁこれまでご本人の役どころが結構ミステリアス破滅的刹那的な若者像が多かったので、時々「いい人」的な役に当たるとちょっとビックリしちゃうんですけど、紹介文読む限り「いい人」モードなのかしらね。まぁ出演数多いからひとくくりにしちゃうのも申し訳ないんだけど。

どちらにしても日本語字幕で観られるのは嬉しい。

グッバイ・ゴダール!』でみっともないお姿をおさらしになった後ですので、ちゃんといい男っぷりを見せていただきたいものでございます(ほんね)

 

しかしこの人歴代の彼女さんをキャスティングするのかそれとも監督–役者の関係そのままにくっついちゃうのかどっちなのだろうと思う私は下衆の勘ぐりでございます

 

妹のエステル・ガレルが、兄貴の若い頃にメチャクチャそっくりさんなので、大物になりすぎた兄貴の代打いけるんじゃねぇか、とくだんねぇことを考えたりもしたことよの

 

ワールドフォーカスでは、

『世界の優しき無関心』も興味があります。

2018.tiff-jp.net

これは本当にまっさら、なんの知識もなく見ます。

監督も知らない、役者も知らない、ストーリーも知らずに、

真っ白な状態で観たいと思います。

 

過去、この部門では

ブリュノ・デュモン、ヴィエゴ・オウンプーなど、

知識なく観て「次もぜひ」という監督の作品がたくさんありました。

今回はだいぶ規模が小さくなってしまったのでちょっとしょんぼりですが、

いい映画をいっぱい観られるといいなぁ、と

思っております。

 

はぁ疲れたのでフィルメックスの件は後で書くよ!

こっちはメガトン級のラインナップにおののいたんだから!

 

 

 

危ない男。(追記しました)

少し前からの話をいたしますと、

6月後半から、空梅雨から台風といきなりの猛暑、

朝4時起き7時半出勤という個人的サマータイム

そして続く猛暑による夏バテが抜けないまま、

今に至っております。

 

やっと食べられるようになってきました。

やっとパソコンに向かう余裕が取れるようになってきました。

 

ちゃんとした映画の話でもしたいところですが、

ものすごく身のない話でここはお茶を濁しておこうかと思います。

まぁ、リハビリみたいなもんだよね。

 

今までちゃんとした映画の話なんて書いたことがないのは無視してほしい

 

先日、国立劇場で、文楽公演「夏祭浪花鑑」

www.ntj.jac.go.jp

を観てきたんですよ。

 

歌舞伎は年何回か観る程度には観ていますが、文楽は初めて。

この演目は、歌舞伎でも夏になるとかかる有名なものです。

しかし、歌舞伎ってその作品の美味しいところだけをかけることがほとんどなので、

ここまでしっかりその物語を語られたのは初めてでした。

 

本筋ではないので、あんまり詳しくは書かないでおこうと思いますが、

歌舞伎では、団七徳兵衛の義兄弟の契りや、自らの顔を焼いてまで筋を通そうとする徳兵衛妻お辰、そして団七が義父である義兵次を殺す凄惨な場面が見せ場であります。

この文楽公演では、普段歌舞伎で上演されない部分も合わせてみせることによって、

物語が「ひとりの人物」によって進んでいくことが示されるんです。

 

玉島磯之丞。

歌舞伎での出番はごく少ない、ええしの頼りないボンです。

女ったらしで、つっとつつけばすぐ転ぶような、どうしようもないボンです

しかし、物語ではこの人物をめぐって、俠気と女の意地と、義理となんとかが絡み合う、壮大なストーリーが語られるのです。

 

はて、終始このダメ男をめぐって、いきの張り合いがなされるこの話。

なんでまた、こんなしょうもない男のために?わっけわかんないよ。

(いやこの話には義理やお金も絡んでいるのでまぁわからんでもござんせんが)

 

しかし。私は認めざるをえません。

人間、ダメな子を見ると守ってあげたくなります。

ダメな子がいい男であれば益々です。

 

ごめんなさい個人的な主観です完全に

 

私、ダメ男はあかん、嫌い、ヤダ、とずっと言い続けてきたんです。

すみません、選べるような立場ではございませんのでイヤもヘチマもありませんが。

しかし。

 

あー好きです、と無条件に言ってしまう映画のキャラクターって結構ダメダメの極みだったりしますよね。

ブエノスアイレス』のレスリー・チャンなんて絶対お近づきになりたくない。

しかし……(この3点リーダーに込められた気持ちを140字で述べよ。句読点は含む。)

 寂れた競馬場でギャーギャー喚くレスリーの場面が大好きだったりするんだけど、画像が見つからなかったので各々脳内でお願いします

 

クリストフ・オノレ美しいひと』のルイ・ガレルの「たらし」っぷりと、その後のモタモタの魅力を端的に答えよ。

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答・美しい。頭が悪い答えですまん。

 でもだいたいこれまでのルイ・ガレルの役どころってどうしようもない破滅的なものが多い感じがするよね。死ぬ確率と言ったら俺の中ではいとしのブシェミたんとタメ張るレベル。

そこから一気に『グッバイ・ゴダール』……膝がかっくんしました。おい!気でも違ったか!

 

マチュー・アマルリックの『愛の犯罪者』では「食おうとして全力で食われにかかってる」小動物的なプルプル感がどうにも愛おしくてたまらんのですが

 

      胸焼けしてきたので本丸に行こう

 

じゃぁ本丸。

個人的に「やばい」「しぬ」と思わせるのが

 

森雅之

殺されてもいいですか

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不幸にして私はあんまり昔の日本映画を観ていません。

お恥ずかしながら神保町の名画座は敷居が高くて、

通い始めたのはごく最近のことです。不規則な仕事には優しくないんだよあそこ。

そこで見た「浮雲」に完全にノックアウトされました。しぬ。だめ。やばい。

 

奥さんがいながら高峰秀子さまと岡田茉莉子さまのはざまをフーラフーラと。

そこに愛なんてあるようでない。たぶん全然ない。

身勝手で、わがままで、甲斐性がなくて、しぶとくて。

我が身だけがかわいくて。

奥さんが亡くなったときなんて葬式の費用をオンナに無心してケロっとしてて。

 

本気でダメじゃん

 

伊香保の温泉街、わりと私はひとりでぶらっと行ったりしてたんだけど、

あー見るとダメだね、

温泉街って本気で色恋沙汰が似合うね

 

そっか、

こういう時、人は理性を吹っ飛ばすんだ

 

品が良くて、やさぐれてて、ほっとけなくて。

まぁ考えてみたら「つっころばし」って、ええしのボンで、教養は高く家柄は良かったりするんだ。

森雅之なんてお父さんは有島武郎、お母さんは男爵家、学校は京大まで行っとる。色恋沙汰と教養にまみれた生い立ちであることよ! 

まぁ見た目からして女と入水でもしそうではありますが、そっちはお父さんがかなり悲惨な状態で発見されたということで。

もっとも、女の出入りは激しかったようではございますな。まぁ納得ではあります。これでストイックだったら私は色々疑うわい。

 

安城家の舞踏会』『白痴』をまだ観ることが叶っていないのはむしろ幸運なんじゃないだろうか。

多分やられるから。

 

さて、

現在神保町で、かつての乙女たちの腰を全力で砕きにかかっているという『白い悪魔』(1958)。

あそこは休日には朝の早いご老人で早々に埋まってしまうのでなかなか油断ができないのですが、

なんとか、なんっとか、仕事終わりに這ってでも行きたいと考えております。

 

私のうちは環境が貧弱で、

古い映画は名画座ででも掛からないと行かないからね。

 

普段ゴキキャップに囲まれて全力で虫がつかないような状態なんだから

スクリーンの中だけでもあかんドキドキをしたいっすよ。

 

()… と、言うわけで、行ってきました『白い悪魔』。

     かつての乙女や現在の乙女もっといるかと思ったらそうでもなかった

よくよく見るとスタッフがめっちゃ豪華!古い日本映画に詳しい人ならいくらでも語れるんじゃないでしょうか?

 

さて。

わたしが「あーこのオトコ、ダメ」と思う理由って「煮え切らなさ」なんだなぁぁ、としみじみ思ったのですが、それは私が割り切りが早い、というか「ここで割り切っとかなきゃあとがつらい」という、名残惜しくも損切りを心掛けて日々暮らしているせいかもしれず、

竹を割ったようでいて実は「質のよくない割り箸を割ったような」性質だからかもしれません。

白い悪魔野添ひとみ演じるアサコちゃんは無邪気でワガママで向こう見ずで、自覚が全くありませんが、

 

「パパのお嫁さんになる!」

 

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というムチャクチャな願望を隠そうともしていません。

小悪魔です。

しかもその行動は次第に小悪魔通り越して

 

大悪魔

 

と変化していくのです。こわっ。やばっ。可愛いで済まされんヤバさです。

 

対して森雅之「パパ」は

その煮え切らなさゆえ初恋の人を不幸に陥れたという負い目を長年背負い続け、

その娘であるアサコちゃんを引き取ります。

 

もうこの時点でインモラル感満載じゃないですか。

       ちょっとまて。

 

おもちゃ屋で駄々こねられるような無邪気な波状攻撃に、オトナの理性(というか煮え切らなさ)はどんどん磨耗していきます。

そして… 周囲を敵に回しても… 

 

        ぐはぁぁぁ

 

ニンゲン、自分にないものに魅力を感じるのだとしたら、

この煮え切らなさと懊悩の色気なんじゃないのかなぁと思います。

それをやらせたら天下一品のモリマ。

 

晩年の作品『カモとねぎ』での意外なコメディアンぶりではもっと軽やかで、自己パロディの余裕すら感じましたが、

やはりこの人は真っ当じゃない感情の陰影がよく似合うなぁぁぁ…

と思いましたよ。

 

実生活じゃぜってぇお近づきになりたくねぇけどな(こっちが壊れる)

 

 

 

お久しぶりです

少し前に書いた原稿ですが、よかったらお読みください。

そろそろ人の生き死にについて以外のパッカーンとしたやつについても描きたいなぁ

 

リチャード・リンクレイター30年後の同窓会』について、座敷牢のおばちゃんに話を聞いて来ました。

 

http://kotocine.blogspot.com/2018/07/1230.html?m

【ネタバレ有】ダミアン・マニヴェル監督ご推薦の映画について。ウジェーヌ・グリーン『ジョゼフの息子』。

先日のカイエ・デュ・シネマ週間では

泳ぎすぎた夜』の宣伝も兼ねてか

ダミアン・マニヴェル監督ご推薦枠で1本の映画が紹介されました。

ウジェーヌ・グリーンジョゼフの息子』(2016)です。

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(2018.12.17追記

   思わぬカイエ週間での再上映でご訪問アクセスがっと増えありがたい限りですが、

以下ガッツリネタバレしております。

ネタバレお嫌いな方はお読みにならないようお願いいたします。

読まんでくれ、という羽目に陥るとは思わなんだ…… 申し訳ありません。

 

 

 

これ、冒頭は大聖堂ドーン、オペラばーんで今にも ものすごく重厚な物語です って顔して始まるの。

うぉ、大丈夫か俺。

第一幕「イサクの犠牲」 そしてどどんと映し出されるカラヴァッジオの絵画。

 

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おフランスのアート映画… インテリ向けっぽすぎ…

とかなり身構えていたのです。

が。

 

のっけから

「仕事手伝ってほしい」「なんの仕事」的高校生男子二人のやりとりが

ひゃひゃひゃ

ってな引き笑いを誘い、そっからもう妙な可笑しみしかない、というね。

売るほど生産されるのかよそいつは… とこれはちょっと伏せといたほうがいい可笑しさ。

 

とりあえず予告編をご覧ください。

www.youtube.com

 

母、マリーと息子、ヴァンサン二人暮らし。息子は若干反抗期。

お母さんはお父さんのことを明かそうとしない。息子ヴァンサンはそれもあってかなり反抗的。

けど、知ってしまったんです、お父さんのことを。お父さんがお母さんを捨てた理由を。

ヴァンサンは仕返しに出かけます。

 

このクズ父を演じるのはわれらがマチュー・アマルリック

スノッブで軽薄なこのあたりの描写が本当にうまいの!

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クズ父のパーティーに潜入する息子。そこで頭が軽そうな人たちに話しかけられて口から出まかせで「自分は小説家だ」と適当なこと言うんだけど、「あら知ってるわあなたのこと」

適当すぎるだろ!

 

この場面は始終この調子なのだが、その辺にいる3人の適当な会話を映すカメラがいちいち

かくっ

かくっ

かくっ

そのザコの顔をきちっと映す律儀ぶり。やだなにこれ真面目なのかふざけてるのかおかしい!

 

まぁ物語を話しちゃうと、クズ父の事務所に潜入したヴァンサンはまんまとクズ父の捕獲に成功し、そのまま縛り付けて逃げ出すんだけど、

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その直前に父とその弟(彼が「ジョゼフ」ね)が会っており、逃げるところを弟(つまりジョゼフ)にうまく助けられるの。

父の弟と意気投合した息子は、彼を母、マリーと引きあわせる。父の弟と母、いい感じになる。

この時点で誰もその絡んだ糸に気づいていない

ただの母と息子と息子の友達、としか思っていない。

 

だんだんマリーとジョゼフがいい感じになってくる。

やがてジョゼフは「僕の育ったところを見せたい」と、一家で旅に出る。ノルマンディかなぁ、うろ覚えだけど。

 

しかしジョセフの生家では!

マリーを捨て、ヴァンサンに縛り上げられたクズ父がパーティーを開いていた!

例の軽薄な連中も一緒!

 

起こりうる事態。だってクズ父とジョゼフは兄弟なんだもん。

そのことに気づかないでのほほんとお家を見せていたジョゼフ。

そして

 

ヴァンサンとクズ父がばったり!

ストーカーがこんなところに!

クズ父、 

即通報!

 

逃げろ〜〜〜

 

ものすごい数の警官に追われる一家!

 

       さてどうなるどうなる?

 

さて。

ウジェーヌ・グリーン

ここで公式に近いところの日本語表記が出ましたが、

これもまた検索しづらい名前だよね。

アメリカ生まれのフランスの監督だそうです。

 

もともとは演劇方面の方だったとか。

だからかな。

画面がものすごくきっちりと構築されてるの。隙がない。

特に「人やモノの配置」に隙がないような気がする。

夜お散歩に出たお母さん、独り。

賑やかなお店には

カップ

カップ

カップ

カップ

カップ

おのおの様々にいちゃつくカップルが計算されたかのように配置されてる。

お母さん、独り。余計に浮かび上がる寂しさ。

 

ヴァンサンとジョゼフ、カフェのシーン。

真横から、左右対称の配置。

この綺麗な対称性が画面構成の基本かも。

  

これ、物語はかなり聖書が前提なんだよね。

マリア、ヨセフ、ヨセフとは血の繋がらないマリアの息子。この時点ではっきり

現在は立川にお住まいのあの聖人のご家族を思わせるよね

んで、

カラヴァッジオ「イサクの犠牲」ラ・トゥール「聖ヨセフ」、

フィリップ・ド・シャンパーニュ「屍衣の上に横たわる死せるキリスト」などの宗教画が象徴的に現れる。

でも、実はその知識は特にいらない。十分映画は楽しめる。

で、最後になって、絡みまくった糸は美しく回収されるんだけど、それぞれの「絡み具合」がわかりやすく描かれていてどこにもハテナマークの要素はなかったし、またとっても優しい!

これはダミアン・マニヴェル監督オススメだっていうのはなんとなくわかる。

シンプルで、優しい。

 

どーでもいいけどバイアグラでは生産性上がらないと思うの、高校生くん

 

さて。

私はだんだん薄れゆくこの映画の記憶を呼び戻すべく、あれこれ検索いたしました。

日本でも限られた上映機会しかないこの作品。あんまりたくさんのレビューは見つかりませんでした。

しかし、ここでも私がつまづいている、ある表現に出会ってしまったのです。

 

ブレッソン

 

ブレッソン的ってなに〜?

なんなんですか?

 

お恥ずかしながらブレッソンは「やさしい女」しか観たことがないのです。

結構上映機会あるはずなのに、ことごとく見逃しているのです。

なお、うちに録画した円盤はある。

 

最初にこの表現でつまづいたのは、

2013年にフィルメックスで観た、カザフスタン映画『ハーモニー・レッスン』(2013)。

filmex.net

(2013)。

これすっごく良かったんで、またどこかでかけてほしい作品なんだけど、

これのレビューでもよく出てくる表現なんだよね、ブレッソンを思わせる、って。

 

それ以来けっこうほうぼうで「ブレッソン的」なる言葉を聞くんだけど、

その正体は茫としてつかめない。

なんなんだろう、「ブレッソン的」って⁇

 

 

 

 

ダミアン・マニヴェル作品について その1『泳ぎすぎた夜』など。

やっとパソコンに向かう時間がとれました。

「待ってました」との大向こうもかからないい過疎ブログですが、

「待っていたとはありがてぇ」と続けましょう。

 

フランスの若手監督の中でも、ひときわ注目を集めているダミアン・マニヴェル

『犬を連れた女』(2011)でジャン・ヴィゴ賞を受賞し、その後カンヌ・ロカルノベネチアなどで作品が紹介されています。

昨年のフィルメックスには、五十嵐耕平監督(『息を殺して』など)との共同監督作品『泳ぎすぎた夜』が出品されました。

映画『泳ぎすぎた夜』オフィシャルサイト

www.youtube.com

 

マニヴェル監督についてですが、以前

『若き詩人』(2015)が公開された時に、われわれのプチ映画レビュー団体が勝手連としてレビュービラをこさえて配布した、ということもあり、まぁ、観られる時には見ておかなきゃ、という、これはもはや親戚のおばちゃんモードです。

 

フィルメックスで観た『泳ぎすぎた夜』。

こども! もちもち! コロコロ! かわゆす!

柴犬とガチ吠えあい圧倒的勝利かわゆす!

モヨオした顔絶妙! ほんと「あ、おしっこ……」てな顔! かわゆす!

なんというアタマの悪い感想がだだ漏れております!

真冬の八戸、厳しすぎる自然の中で繰り広げられる「命がかかったはじめてのおつかい」(しかし命がけであることは誰も気にしていない)

 

わんこニャンコとこどもには勝てない、とはよく言われます。

しかし、この映画、いわゆる「こども映画」じゃないんです。

たからくん、という圧倒的なエネルギーの塊が、北国の厳しい自然の中、どのようにその力をスクリーンに焼き付けるか。

セリフは全くありません。たからくんの身体性と、予期せぬ自然現象の数々が絡み合い、サイレント映画のような無言の雄弁が、スタンダードサイズの小さな画面に展開します。

この画面のサイズも絶妙。絵本です。ページをめくるように、お父さんが仕事に行ってから、息子が後を追う、そして帰ってくる。大切なページをめくるように、映画は進んでいきます。

またお父さんがシブくていいんだ……お父さんのタバコのくゆらせ方からしてすでにこども映画じゃないことがよくわかる。かっちょいいから見逃さないで!

 

たからくんが職業子役じゃないためかもしれませんが、役者さんをご家族役にすると「このひとちがう」と正直すぎるダメだしをくらったとのことで、実際のご家族が出演されました。このドキュメンタリー的な作劇はちょいちょい見ますね(同年の東京国際映画祭で上映された『ナポリ、輝きの陰で』でも実際のご家族が出演されてました。まぁ、この場合はリアリティを追求したものではないのかもしれませんが)。

その代わりかどうかは定かではありませんが、お家のセットや、間取りがわからないような編集にはこだわった、とどこかで伺った気がします。

音にもこだわったんじゃないかなぁ。というのは、この映画、とてもリアルに見えて、多分気付かない人は気付かないところに細かな仕掛けがたくさんしてあるんです。お母さんとお姉ちゃんが並んで観るテレビの音とか、親戚のお兄さんの車の中に響く音楽とか。(ここで突っ込むのは野暮だよ、と個人的には思います。そこでリアルを追求しないところがいいんじゃないか!)

 

自然を撮った……というのは、幾つかの驚くべきショットがあらわしています。これ相当天候待ちしたんだろうなぁ、と思いましたが、それは先日の

第21回 カイエ・デュ・シネマ週間

にて『パーク』(2016)が上映されたときのティーチインで「待った、撮った」的な言い方がされていたため、この監督相当偶然を装った必然としての自然のマジックにこだわるんだなぁ、と思った次第。

 

しかし先ほど言及したシーンは実は編集だったことが判明してうっかり爆笑したのは内緒です。そこまでリアリズムとファンタジーの境目は曖昧である!

 

真冬の映画が春先に公開されました。

私ももう一度行きたい! 本当は初日初回に行きたかった! 

ちょっと大きくなったたからくんに飴ちゃんもらいたかった

Twitterに、ベネチアでのマニヴェル監督との写真がアップされていましたが、かわいい紋付袴ですました顔で歩く、もちもちすべすべほっぺに、親戚のおばちゃんマインドフルパワーで炸裂してしまいました。

 

まだ各地映画館でやってるよ!

 

カイエ(略)で観た他の作品についても書きたいのですが、私はいっぺんに全部やってしまうと力尽きてしまって、更新はまただいぶ先、なんてことになりかねないので、次にしよう。

ウジェーヌ・グリーン『ジョゼフの息子』がすっごく面白かったので、次はそれについて書いてみようかな。ダミアン・マニヴェル監督ご推薦で上映された作品です。

 

そいではまたね。

 

シリア内戦のドキュメンタリーについて書きました。

ぷかっ。再浮上。

すごく難産だったこの文章。

こんなの掲載してもらえるのかなぁ…と

ボツになっても仕方ないと思っていました。

無事掲載されました。

正直、こわかった…早くまともなレビューに埋めてもらいたいくらいです。

 

ラッカは静かに虐殺されている』レビューです。

http://webneo.org/archives/45196

書いてますよ。

3月はめちゃくちゃ忙しかったのでブログのたわごとは更新できませんでしたが、

こちらには書いてます。

とてもあったかな映画なので日本公開されるといいな…

 

第18回東京フィルメックス上映作品

『ジョニーは行方不明』

http://kotocine.blogspot.jp/2018/03/18-text.html?m