ダミアン・マニヴェル作品について その1『泳ぎすぎた夜』など。
やっとパソコンに向かう時間がとれました。
「待ってました」との大向こうもかからないい過疎ブログですが、
「待っていたとはありがてぇ」と続けましょう。
フランスの若手監督の中でも、ひときわ注目を集めているダミアン・マニヴェル。
『犬を連れた女』(2011)でジャン・ヴィゴ賞を受賞し、その後カンヌ・ロカルノ・ベネチアなどで作品が紹介されています。
昨年のフィルメックスには、五十嵐耕平監督(『息を殺して』など)との共同監督作品『泳ぎすぎた夜』が出品されました。
マニヴェル監督についてですが、以前
『若き詩人』(2015)が公開された時に、われわれのプチ映画レビュー団体が勝手連としてレビュービラをこさえて配布した、ということもあり、まぁ、観られる時には見ておかなきゃ、という、これはもはや親戚のおばちゃんモードです。
フィルメックスで観た『泳ぎすぎた夜』。
こども! もちもち! コロコロ! かわゆす!
柴犬とガチ吠えあい圧倒的勝利かわゆす!
モヨオした顔絶妙! ほんと「あ、おしっこ……」てな顔! かわゆす!
なんというアタマの悪い感想がだだ漏れております!
真冬の八戸、厳しすぎる自然の中で繰り広げられる「命がかかったはじめてのおつかい」(しかし命がけであることは誰も気にしていない)。
わんこニャンコとこどもには勝てない、とはよく言われます。
しかし、この映画、いわゆる「こども映画」じゃないんです。
たからくん、という圧倒的なエネルギーの塊が、北国の厳しい自然の中、どのようにその力をスクリーンに焼き付けるか。
セリフは全くありません。たからくんの身体性と、予期せぬ自然現象の数々が絡み合い、サイレント映画のような無言の雄弁が、スタンダードサイズの小さな画面に展開します。
この画面のサイズも絶妙。絵本です。ページをめくるように、お父さんが仕事に行ってから、息子が後を追う、そして帰ってくる。大切なページをめくるように、映画は進んでいきます。
またお父さんがシブくていいんだ……お父さんのタバコのくゆらせ方からしてすでにこども映画じゃないことがよくわかる。かっちょいいから見逃さないで!
たからくんが職業子役じゃないためかもしれませんが、役者さんをご家族役にすると「このひとちがう」と正直すぎるダメだしをくらったとのことで、実際のご家族が出演されました。このドキュメンタリー的な作劇はちょいちょい見ますね(同年の東京国際映画祭で上映された『ナポリ、輝きの陰で』でも実際のご家族が出演されてました。まぁ、この場合はリアリティを追求したものではないのかもしれませんが)。
その代わりかどうかは定かではありませんが、お家のセットや、間取りがわからないような編集にはこだわった、とどこかで伺った気がします。
音にもこだわったんじゃないかなぁ。というのは、この映画、とてもリアルに見えて、多分気付かない人は気付かないところに細かな仕掛けがたくさんしてあるんです。お母さんとお姉ちゃんが並んで観るテレビの音とか、親戚のお兄さんの車の中に響く音楽とか。(ここで突っ込むのは野暮だよ、と個人的には思います。そこでリアルを追求しないところがいいんじゃないか!)
自然を撮った……というのは、幾つかの驚くべきショットがあらわしています。これ相当天候待ちしたんだろうなぁ、と思いましたが、それは先日の
にて『パーク』(2016)が上映されたときのティーチインで「待った、撮った」的な言い方がされていたため、この監督相当偶然を装った必然としての自然のマジックにこだわるんだなぁ、と思った次第。
しかし先ほど言及したシーンは実は編集だったことが判明してうっかり爆笑したのは内緒です。そこまでリアリズムとファンタジーの境目は曖昧である!
真冬の映画が春先に公開されました。
私ももう一度行きたい! 本当は初日初回に行きたかった!
ちょっと大きくなったたからくんに飴ちゃんもらいたかった!
Twitterに、ベネチアでのマニヴェル監督との写真がアップされていましたが、かわいい紋付袴ですました顔で歩く、もちもちすべすべほっぺに、親戚のおばちゃんマインドフルパワーで炸裂してしまいました。
まだ各地映画館でやってるよ!
カイエ(略)で観た他の作品についても書きたいのですが、私はいっぺんに全部やってしまうと力尽きてしまって、更新はまただいぶ先、なんてことになりかねないので、次にしよう。
ウジェーヌ・グリーン『ジョゼフの息子』がすっごく面白かったので、次はそれについて書いてみようかな。ダミアン・マニヴェル監督ご推薦で上映された作品です。
そいではまたね。