山形強行軍。
一度完成まで行きかけた記事が
パソコンのフリーズにより全部消えたことについて
ショックを隠しきれません。
先日、山形へ行ってきました。
山形国際ドキュメンタリー映画祭に初めて行ったんです。
なにかとクリアすべきハードルが多かった…初めてだけに…
まず
宿がねぇ
タイムテーブルが出て、観たい映画決めて、最適なスケジュールだして、いざ宿を取ろうとしたら
山形市内はもう宿がねぇ
お金出して高い宿ならあるのかもしれないけど。
映画観に行くのに高い宿って取りたくないよね。
今回の本命を決めて、日程絞って、日月で行くことにしました。
それなら市内の安い宿が取れたんです。
あと交通手段ね。
新幹線は高いし、終映が遅くなったらだめかもしれない。
高速バスは結構時間取られるので面倒。
よって
自分の軽自動車でブーンと行くぜ
ひゃっはー!
朝4時出発おはようございます
夜明けの高速を軽快にかっ飛ばして朝9時頃には現地入り。
お腹が空きました……
飯屋がねぇ
いやマヂでないの!
路上に所在なさげに突っ立っている人々。絶対同じ匂いがする!
大正義モスバーガー
入った途端に客が全部映画祭のチラシ広げているという豪快な光景。俺は一人じゃない!いやぼっちだけど!客が全員映画祭の客!モス書き入れ時だな!
この飯屋不足には滞在中悩まされるハメに陥りました。
今回のメインというかヘッドライナーはこの2本。
『エクス・リブリス』『翡翠之城』
それから観られるものを観る。
『カラブリア』これめっちゃ面白かったなぁ!ドキュメンタリーの枠を超えて、おっさんのバディロードムービーとしても面白かったよ。
あちこちから人が集まる場所、土に還る故郷、そもそも故郷という概念があるのかわからない流浪の民が足を下ろした場所、「故郷とはなんぞや」とすごく真剣に考えてみた。ジプシー音楽好きにもたまんなかったね。ジプシーのミュージシャンとしてセルビアで売れっ子だったおっさんがなんでスイスに根をおろすことになったのかも興味深い。
『エクス・リブリス』は元図書館員としては観ておかねばならない作品。
「アメリカ最大の公共図書館」としての使命感、そして「公立」ではないが故の矜持(「公立」と「公共」の違いね)。こんなにも熱い、そして能力が求められる図書館って!羨ましくもあり、しかしこの熱さを日本にそのまま持ってくるには無理がある。あまりにも日本の状況はお粗末であり、その一端を垣間見た自分には辛いものもありました。
どっちにしても司書課程においてはこの映画見せて2単位でいいと思うよ。それくらい濃密なんだ。理想の図書館なんだ。理想とは遠くにありて思うもの。
コンチクショウ、とあの頃のイライラを思い出してしまったことでもありますが、私はもうあの業界から足を洗ったのでした。戻ってあげても良くってよ? 時給が5割増しになったら考えても良くってよ?
さて、飯屋不足の中ラーメン屋で夕飯を済ませ、明日の駐車場どうしよう、安いところねぇかなぁ、とぶらぶらしていたら知り合いにバッタリ。
山形ドキュメンタリーのナイトライフにお友達は不可欠です。
ドキュメンタリーレコードを聴く会にもお二人の案内がなければ行けなかったことでしょう。めっちゃ面白かったもうどこ刺されてもツボでした。
噂に聞く、映画ファンの交流の場「香味庵クラブ」ですが、人見知りに優しくない仕様。手持ちブタさんのままとぼとぼ帰ってくる羽目になりかねません。が、初めての山形なら行っておきたいところです。
店の外まであふれた人々、ビールを飲みながら眺めた空にはぽっかりと綺麗なお月様が浮かんでおりました。
……映画を3本も観て、イベントに紛れ込み、日付がかわって25時、宿に戻る。クッタクタである。さすがに丸一日近く動き回っていると意識も朦朧としている。寝る。
…しかし悲しいかな宿は10時で叩き出されたのでありました。もう少しゆっくりさせておくれよ。
ぼんやりが覚めきらないまましばらくガソリンと朝ごはんを求めてドライブ。
不慣れな土地で食べ物にありつくのはこんなに大変なことか
今日は『酒田グリーン・ハウス証言集』『このささいな父の存在』そして『翡翠之城』を観る。
「世界一の映画館」と言われたグリーン・ハウス。ある出来事を境に人々の口にのぼらなくなったこの場所を再評価する作品。
グリーン・ハウスがいかに人々の記憶に残る場であったかを証明するような満員ぎうぎうお立ち見ぶり。私は席を譲るべきだったのではないだろうか?
まさに山形ニューシネマパラダイス、映画を愛し、映画館を愛する人々の心の中には各々思い出の映画館が建っているのであります。うっかり涙も出ました。涙腺緩いんだよ!
ちなみにこの映画では「映画とコーヒー」について熱く語られましたが、私の心の中にぽかっと建つ一軒の映画館は、リアルに「映画とコーヒー」をやってのけたところです。あやしくて胡散臭くて、けど夏休みは子どもたちの溜まり場だったあの映画館。気づいたら、日本でも指折りの美味いコーヒーを出す喫茶店となっておりました。学生の頃日常的に舌を肥やしていたのは贅沢なことだったのだなぁと今思います。そして、当時「宝塚」なる単語は、うちの地域の子どもに間違ったイメージが持たれていた理由も、なんとなく思い出しました……
『翡翠之城』は、『マンダレーへの道』で、不法入国の労働者をあまりにもリアルに描いたミディ・ジー監督の作品。お兄さんの協力のもと撮影された、ゴールドラッシュならぬ翡翠ラッシュの街の光景。
そこは、各国政府と、民族の権利争いの隙間をかいくぐって、一攫千金を狙う男たちが蠢く地獄のような場所でした。地獄も通常営業になると日常です。そんな彼らの、穴を掘り、翡翠を探し、時にアヘンを嗜む日常が、映されます。
いかにもインテリ然としたジー監督ですが、「自分もいずれ翡翠掘りになるはずだった」というから驚きです。そういえば、『マンダレーへの道』は身近な人々のリアルな物語である、と言っていたことでした。しかし、そこで運命の歯車がガチャッと食い違った。
監督は若くして台湾に渡り、今は映画監督として活躍中。歯車ってすごいですね、怖いですね、なにがあるかわからないのですね。
そしてこの作品は「16年もの間疎遠だった兄弟が、再び家族となっていく様子」をも映し出しているのです。そりゃそれだけ顔を合わせていなければ、そしてある意味「山師」なお兄さんと、そこから抜け出した弟、境遇も全く違えば他人も同然でしょう。しかし、監督は、今は翡翠掘りの親方から足を洗ったお兄さんを、「僕の映画のプロデューサーになってほしい」というほど信頼している。兄弟の映画作り、観てみたいなぁ。
そしてこの映画、遠景がとてもいいんです! 地獄も遠くから見るととても美しく見えるんです。ブリューゲルの描く地獄ってこんな感じなんじゃないかな、とちょっと思った。
ドキュメンタリーってなんだろう、としげしげ考えたよね。ドキュメンタリー=ノンフィクション、ではない。全く違う。そこには確かに監督の意図がある。『このささいな父の存在』なんて、身近な人々を撮影して、イメージのままに編集したコラージュ、映像詩って感じだったし。これは現実ではない。現実ではないドキュメンタリーも余裕でアリ。
そして、ここから一般公開されるそのチョイスも、誰かの意図。配給公開も編集のうち。
ドキュメンタリーって、なんだろう?
しかしやっぱり1泊2日は勿体無かったなぁ。せめて2泊はしたかったなぁ。つくづく、日銭仕事で毎日仕事仕事ってお金のことばかり考えている貧しい自分に気がついたよ。だって日銭仕事ってつまりは1日仕事入れないとそれだけ稼ぎが減るってことでさ……なんだか2泊も映画三昧って贅沢すぎる気がしてさ……まぁなにを抜かすか先月末は5日間も台北でぼけっとしていたヤツが今更、とも思うけどさ……
懐があまり豊かではないことは事実だけど、もうちょっと気持ちにゆとりを持とうと思ったことよ。実際仕事仕事言ってても今日みたいに風邪ひいて仕事休まなきゃならないこともあるしね! 季節の変わり目ってどんなに気をつけてても仕方ないことあるよね!
帰り道はロスト・ハイウェイ
ぼんやりしたまままたも3本映画を観て、現地を出たのは夜10時過ぎだった。
お腹も空いていたけれど、これ以上遅くなると途中で眠くなってしまう。もうまっすぐ帰ろう。
山形蔵王から高速に乗ったんだけど、
暗い!
怖い!
まぢ暗い!
『ロスト・ハイウェイ』の冒頭シーンとか、『マルホランド・ドライブ』の真っ暗な道とか穏やかじゃない!そんな光景!
自分の車のライトで照らされたところしか見えない、他は漆黒の闇。やだこれ!これで5時間!
意識が異空間にぶっ飛んで行きそう!
今聴ける音楽限られるわ!
というわけで
岡村ちゃんを全力でガンガンかけて
ついでに全力で歌いながら帰ってきたのですが
必死こいて運転して帰宅して
ライブ後みたいに耳がキーンといっておりました。
どんだけガンガンかけていたんだろう?
まぁ結構ヤバげにガンギマリ状態だったよね。
さて。
高速代と駐車代とガソリン代足したのと
時間的拘束が大きい高速バスと
どっちが安いんだろう?
答えはまだ出ない。
一枚も写真を撮ってこなかった山形強行軍。
全く関係ないけれど
帰り道を救ってくれた岡村ちゃんの曲をお聞きください。
ええ、私は全力でこれを歌いながら帰ってきたんです……
ふぉぉぉ!!!!(じゃかじゃーん)