映画について私が全然知らないいろいろな事柄

@ohirunemorphine が、だらだらと映画についてあれこれ考えます。

【余談】フェブラリーステークスで思い出した。【映画の話だよ】

昔、わたしは競馬が好きだったのです。

しかし馬券のセンスは皆無であり、仲間はわたしが記入したマークシートを「いか予想」と呼びくさり、

 

わたしが買う馬券を外して買いやがるのである

 

実際、鉄板で武、という場面でも

いかちゃんが買うと武でも飛ぶわ

 

ええ、飛ばした回数は数知れず。

 

土日がない仕事になり、贔屓の騎手も引退し、個性的な馬がいなくなり、わたしは今は全然競馬をやっていません。

最近の若いモンに「昔はなぁ…」とやってる時わたしは立派なおっちゃんであります。

 

2/17。

第36回フェブラリーステークスが開催されました。

話題は

 

藤田菜七子騎手、JRA女性騎手初G1騎乗!

1200までなら強いけど…という評価の馬でしたが、

見事な後方一気、5着入賞!

初めてJRAに女性騎手が誕生した頃に競馬にハマっていた自分にとって感慨深いものがあります。

ちょっと泣いてもいいですか。あれから何年たったんですか。

 

この藤田騎手の師匠が、根本康弘調教師です。

騎手時代の戦績は235勝。え?というほど「勝ち鞍」は多くありません。

わたしもその全盛期は流石に知りません。

しかし。この内容が凄い。

中山大障害3勝

天皇賞(秋)

そして

 

ダービージョッキーでもあるのでした!

濃すぎるわ。

 

メリーナイス。栗毛四白流星という派手な馬体に、鞍上根本の「ヨーロピアン」と呼ばれる

 

へんな

 

乗り方。6馬身差の圧勝だったそうです。

流石にわたしも観てないので動画をどうぞ。

https://youtu.be/iXTnxbxL-P4

 

わたしが競馬にハマり始めて間もなく、根本騎手は調教師に転身しました。

面白くて面倒見がいい人なんだろうなぁ。

マーチS、アミサイクロンで大穴をあけ、茶髪にピアスと当時珍しかった(いまだってそんなにいるとは思えない)いでたちで、別の意味で注目された平目騎手が、引退後根本先生の調教助手になったのでした(平目さん…悲しいことに自殺しちゃったんですよね…いつぞやのオークスかなんかのパドックで、ものすごいロックスターな姿で馬を引いていたのを思い出します)。

16年ぶりにデビューした女性騎手、藤田さんがいい感じに勝ち星を挙げられているのはきっと根本先生のおかげもあるんだと思います。所属騎手3人も抱えてるってすごい面倒見のよさだよ!

 

で、なんで私が映画ブログで競馬の話をしてるんでしょうか。

杉田成道監督『優駿 ORACION』(1988)に、この根本先生、オラシオンの主戦騎手役で出てるんだそうです!ちゃんと役名もあるよ!

f:id:ohirunemorphine:20190217234206j:image

 

なぜ律儀に伝聞調で書いてるかというと、わたしこの映画観てないからですw

 

劇中の日本ダービーのシーンは、この第54回日本ダービーの実際の映像が使用される予定だったそうです。優勝馬オラシオンに見立てるやつ。

しかし、この時の1番人気はマティリアル。全然メリーナイスはマークされていなかったのはご覧のとおり。

さらに、マティリアルとメリーナイスは毛色からして全然違うため、マティリアルが勝つ、と想定して準備された仔馬を探しなおす羽目に陥ったそうです。ウィキペディアより。

 

また、メリーナイスは 暮れの大一番有馬記念

 

ゲート開いたら落馬

 

なるオモシロをしでかしたやつでもありますが、

これも使われているそうで。

https://youtu.be/q_yENhsbD7E

 

このシーンがらみで、根本騎手ちゃんとセリフあるんだそうです!

俳優根本康弘!

 

ごめんなさい久しぶりに競馬の話したかっただけなんです。

そんだけなんです。

これまでの執筆まとめ。

これまで書いたレビューをまとめてみました。

 

 2015年

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第16回東京フィルメックス ツァイ・ミンリャン特集について書きました。

ツァイ・ミンリャン大好きです。

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ツァイ・ミンリャン『ヴィザージュ』の初見時メモを6年寝かせてリライトしました。

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2016年

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2017年

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『リトル京太の冒険』について書いています。民俗学的な観点が間違っていることが後ほど判明しましたが、後の祭り……

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夜は短し歩けよ乙女』について、座敷牢に閉じこもってるおばちゃんに聞きました。

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元・図書館員です。食ってけねえのでやめましたが、アメリカの状況は……

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四半世紀心待ちにしていた映画について書きました。待てば叶う!

(でもこのブログではもっと詳細にあれこれ書いてますけどね)

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 2018年

第18回東京フィルメックスで上映された『ジョニーは行方不明』(公開時タイトル・『台北暮色』)について書きました。

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30年後の同窓会』について、座敷牢に閉じこもってるおばちゃんに話を聞きました。

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 以上、

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に掲載された文章です。

ことばの映画館は冊子も発行しておりまして、私は3館と4館に参加しています。

 

www.mosakusha.com

www.mosakusha.com

 

リンク先にて内容が確認できます。神保町矢口書店ではまだ現物売ってくださっているのを確認しました()

密かにアップリンクさんでも取り扱いがあります(売り切れてなければ)。よろしければお読みください。

(渋谷TSUTAYAさんでも取り扱ってくださっていた、との話がありますが、未確認……)

 

時々neoneo webにも載せていただいています。

webneo.org

webneo.org

webneo.org

webneo.org

 

昨年から明らかにペースが落ちていますね…

順調に書けていた頃は、はっきり言って無職に近かったのです。

最近は不規則な肉体労働がたたり、書きたいのに書けない……媒体に載せるにはすごく慎重に書かなきゃならんですからね……(慎重さがあんまり功を奏したことはない)

そこで気楽に書けるところを、とこのブログを開設したのですが、

 

休み不規則すぎてパソコンに向かえない

 

今年はもっと書きたいです。

リクエストもお待ちしています()

 

 

『象は静かに座っている』レビュー掲載のお知らせ。

ごぶさたしております。

neoneo webに掲載していただきました。

フー・ボー監督『象は静かに座っている』レビューです。

http://webneo.org/archives/46590

 

フィルメックスで、neoneoの金子先生にお会いしたとき、

『象』書いてみない?とお声をかけていただき、

「はーい」

と軽ーく返事した後に

 

これは大変な作品を書くことになった

 

と震える思いをしたものです。

いろいろ頑張りました。ぜひお読みください。

第19回東京フィルメックスが終わって、私の冬がやってきました。

今年の映画祭ラッシュで驚いたことがあります。

 

毎日毎日毎日毎日朝から晩までどっかの上映観てる人が

世の中にはこんなにいるんだってこと

 

いつ寝てるの?いつ起きてるの?電車とか乗ってんの?

そもそも

 

おうちにちゃんと帰ってるの?

 

そんな映画好きというよりむしろ尊敬の念を込めて放送禁止用語すら持ち出したくなるような方々の

情報を網羅し、適切な作品を選択し、チケットを確保し、いついかなる時間でも

 

そこに時間通りに行く

 

という、秘書と運転手でもいるんですかっていうような自己管理能力に恐れおののいております。

 

私自身は、(なぜか秋に集中している気がする)特集上映の全てを網羅してると

そもそも働けねぇということは収入がねぇ

 

自分が従事する仕事はバカでもできるとはいえ、ある時間拘束され、「時間を売らない」限りは安酒も呑めず睡眠も取れない。

俺は睡眠に課金しています

そして

 

毎日真っ暗な中で過ごして終電で帰宅ってのは自律神経にきませんか

 

やられました。腰と全身の筋肉と自律神経が。ただでさえ息してない自律神経が完全に逝かれました。

 

眠れない薬が効かない

めでたく一旦眠れたら今度は起きられない

 

というわけで

東京国際映画祭東京フィルメックスも前半でバテバテになり

後半戦はお昼の上映にすら間に合わないという体たらく

もう諦めて 今日は行かね とお家から出なかったら

その日にかかった映画がグランプリだったりするわけですよ

 

というわけで前置きが長うなりましたが、

第19回東京フィルメックスについての雑感を書いてみましょうかね。

改めてこちらをどうぞ(とサイトを示す雑ブログ)

filmex.jp

 

その豪華さにおののいた今年のラインナップ。

しかし、例年「なんとなく傾向はあるな」と感じてきたように

今年もしっかり「トレンド」はありました。

正直、「……またぁ?」と思わせるレベルで。

世界各地で似たような民話や伝承が同じような時期に発生する、という民俗学的な説でも納得します。

 

今年の傾向は

「フィルムノワール

「自と他、現実と夢(あるいは銀幕の中外)の融合」

「見知らぬ男を助ける」……

そしてウォン・カーウァイ

コンペ作にとどまらず、アミール・ナデリの最新作までバッチリそんな感じ。これはどういうことなんだ。

 

審査員特別賞、ペマツェテン監督『轢き殺された羊』。

これは実際にウォン・カーウァイがプロデュースした作品で、「西部劇テイスト」を無理くりフィルムノワールに当てはめるとすべての要件をクリア。

 

いやこれすごく面白かった!

実はフィルメックスでペマツェテン監督作を観るのは初めてだったので、この洒脱なユーモアが「もともとそう」だったのか、ウォン・カーウァイの影響なのかがわからないのが残念です。

 

いかつくも心優しく信心深いトラック野郎と、

小汚くも端正かつどことなく育ちの良さを感じさせる旅人、2人の「ジンパ」。

旅は道連れ世は情け、袖すり合うもなんとやら、マニ車の回転もかくや、「輪廻」なる概念をも思わせる2人の縁。

スタンダードの画角は無駄に「辺境」を売りにすることのない収まりの良い大きさで、

肝心の2人の顔を正面から撮っても「顔を半分しか映さない」。

荒野を突き進むトラックの轍の跡を彩るのは なんと「オー・ソレ・ミオ」大音量w

 

 

トラック野郎ジンパが、轢いてしまった羊を律儀に弔うシークエンスも最高です。

戸惑う坊さん、茶々を入れる寺男

そして「羊の恩返し」のように、それからの物語は転がっていくのですが……

 

羊肉半身分(ワイルドに売られてる食用)を担ぎ、

茶館で食らうは

肉1キロ(骨つきをセルフで削り取りながら食う)

まんじゅう15個

お茶ガブガブ

怪しいバドワイザー2本謎の作法あり

それでもまだ食うんか!

 

実は飯テロ映画。

 

色っぽい茶館の女主人が語る旅人ジンパの物語は、そっくりそのままトラック野郎ジンパの「いま」そのまんま。(ここの撮影が超かっこよかった)

この2人の境目はどんどん溶けてゆきます。

 

そんな夢とうつつの曖昧さはチベット箴言に基づいているらしい。

だから、たぶんしばしば現れる「回転」のモチーフ(トラックの車輪、茶館のじいさんが回すマニ車、そして2人のジンパの、円環を思わせる縁)が説得力を持つ。

 

そうなんだよな、

今回ぼんやり今年のトレンドと受賞作を眺めていて

ハイレベルにもほどがあった出品作の数々の中から受賞するっていうのは

「裏がしっかりしている」からなんだなぁ、と思ったんです。

 

スペシャル・メンション、広瀬奈々子監督『夜明け』。

川べりで気絶している男を助け、連れ帰り世話をする初老の男。

なぜ彼がこんな素性も知れぬ怪しい男に親切なのか。

 

この作品には、先に挙げた「見知らぬ男を助ける」「自と他が曖昧になる」ふたつの題材が見られる。

他者として扱われる自己と、それに応え、越えてしまいそうになる自己。

しかしその理由は恐ろしいほどの「投影」であり、過剰なまでの「共同体への幻想」であり、自己を捨て共同体に取り込まれそうになっていた男は、そこから自らの力で脱出する。

公開が間近ということで、抽象的な表現になってしまって歯がゆいが、このように「きっちりした裏付け」があるというのは強い。そして、私が個人的に好感を持ったのは

 

・溶けそうになった自我を取り戻すことに成功し、絡め取られた網から逃げ出すことに成功した

・「家族」「絆」と、善きものとされている概念を疑い、その薄気味悪さを描けている

 

ここなんだ。

溶け合った「自」と「他」、そのままこの世ならぬ世界に行ってしまう作品が多かった。「自我を取り戻す」までを描ききった作品、意外となかった。

そして「絆」の薄気味悪さ。絆、縛るものだよ。なんでそんないいものだとされているの?

 

もちろん、是枝ブランドは強いなぁ、とも感じている。監督自身も「恵まれていた」と語る。そりゃそうだ。是枝のコネクションをフルに使えるんだから!

そして、「イレギュラーな家族」を描き続けてきた是枝監督のお眼鏡にかなったこの企画。やっぱりなんつーか、「是枝の直系」だ。

この先、「脱皮」できるか? 

(どうでも良いが、監督がこの作品を作るきっかけとなったのは東日本大震災だというが、この作品からは震災の影響は感じない。あれから日本にはいろいろな災害が起き、「日本全国総被災地」だ。「震災」「フクシマ」からインスピレーション受けた、というのはなぜこんなに多いのか。)

 

個人的に今年の目玉だった、ビー・ガン監督『ロングデイズ・ジャーニー、イントゥ・ナイト』。

学生審査員賞を受賞しましたが、

 

これ扱い難しかったんじゃないかなぁ。

映画そのものが壮大なる実験なんだもん。

で、先ほどの「今年のトレンド」では、「フィルムノワール」「銀幕の内外の融合」「ウォン・カーウァイ」3つにあてはまる。

 

てーか今日本の自主制作界隈で「クロサワの弟子」がぞろぞろ出てきてるのと同じように、

「新鋭が巨匠となった今」フォロワーがぞろぞろ出てくる頃なのかな。

TIFFジャ・ジャンクーっぽい作品、出てたよね)

 

ウォン・カーウァイがアジアの若い作家に与えた影響半端ないんだなぁ。

もう青いネオンに赤い照明、雨ざんざかの画面見ると全て「あー」と思っちゃうよ。そこからどう「脱出」するかこの先の楽しみになるのかもなぁ。

 

結構賛否両論のこの作品でしたが、個人的にはここまで風呂敷広げてくれると好きにならずにいられません。冒頭の人を食ったような注意書きを忠実に実行する観客の皆さんが素晴らしい。

前半が好き、後半が好き、そもそもどちらもわけわかんなくて苦手、そもそも3Dにする理由がわからない、などもう言われたい放題ですが、ありったけの実験精神をここまでスタイリッシュにまとめた手腕と、個人的には

 

後半の超長回し、セットかロケか知りませんけど、

ものすごいダンジョン感で、この動線考えた人天才なんじゃないかと思う。

深さ、高さ、低さ、奥行き、素晴らしいとしか言えない。

その上で思わせぶりな前半部を全て回収してるの。うまい!

だって前半全然意味わかんなかったんだもん。

予告編でカラオケ歌っている白いパナマ帽の男は主人公じゃないって案外気づいてない人多いんじゃないかしら、って言って自分でも自信ない。奥でぶら下げられてたのが主人公だよね?そのレベルでバラバラに放り出されたパズルのピースが、「夢」あるいは「映画内映画」で回収されていく小気味よさ。それをほぼワンカットですよ……大変な実験ではないですか。

いや、本当に夢のような映画体験で、私も行ったきり帰ってこられなくなりそうでした。

「映画体験」ってうっかり言ってしまいましたが、まさにその言葉がピシャッとハマる作品だったんじゃないかな、って思います。全体の出来が図抜けてた、というよりもむしろ。

来年の夏、ビー・ガン監督の前作『凱里ブルース』と一緒に公開されるそうですが、その時に3Dで観られるか、こんないい音響で観られるか、わかんないですからね。

 

さて。

グランプリの発表です。

 

これまでのフィルメックス受賞作の傾向って、やっぱりありました。「社会問題」です。

今回のコンペ作って、意外とそれを扱っているのがなかったんです。もしくは、隠し味として使われているか。その地域の問題を、より普遍的な物語として描いた結果、問題が薄れてしまった、という感があるものも(かえって、「ひとつのおとぎ話」として捉えることができた、という好意的意見もつけ加えておきます)。

そして、意外と「女性が強い」作品も、あんまりなかった。きょうびの流れ、ここはポイントかなぁ、と。

 

そして、何より私が「これが獲るかな」と思った理由は

 

私が観ていない作品であるということ

 

はい、予想は的中しました。

グランプリは、セルゲイ・ドヴォルツェヴォイ監督『アイカ』でした。

不法移民女性の過酷な運命を力強く描いた……とは言っても、観ていないんだからあまりいろいろ言えません。

 

フィルメックスに強いテーマって、やっぱりあるんだな、ということと、

今回、賞の授与にはかなりバランスを考えたんじゃないかなぁ。

中華圏からの出品多かったけど、台湾金馬奨と色々モロかぶりだったし。

 

繰り返しますが今年のありえないハイレベルぶりには、

 

あんまり客にいいもんばかり食わせちゃいけないよ!

客が肥える! どんな素晴らしい作品にもいちゃもんつけちゃう!

 

としみじみと感じた次第でございます。カロリー高ぇ。まぢで。

 

しかもどれもこれも演出が洗練されてんだよ…一時「見せたもん勝ち」的な品のないリアルばかりだった時もあったじゃん……あれ辛かったからさ……

 

しかも今回は開催期間に比べて上映作品がぐっと増え、1回上映で観逃した作品が多いことが悔やまれます。

丈夫な体と通いやすい家と

毎日通っても平気な財布が欲しいわ

 

実は、今年の目玉のひとつ、フー・ボー監督『象は静かに座っている』

これは観客賞がなければないな、と思っていました。

観客賞は近浦啓監督『コンプリシティ』。なんと開会式+ホン・サンスの裏でやっていた作品です。

開会式を蹴って行く客が多い映画……そりゃファンが多そうです。

もっとも、今年の観客賞投票はQRコードでの投票、どうやって集計して結果出しているんだろう、と統計方面的に不思議だなと思ったりもしてしまいました。

 

テキストばかりで延々のんべんだらりと書いてきましたが、

秋の例大祭、終わりました。

東京国際映画祭東京フィルメックス

対照的なこのふたつの映画祭。

 

お金のかけどころを間違ってる、としか思えなくなってきたTIFF

レッドカーペット、いらないんじゃないかなぁ。

開会式のお偉いさんの口から出る『東京物語』。本当に見たことありますか? 私はないです!

審査員長の苦言も「リアリズム一筋の人に言われたくないなぁ」とちょっと反発したりしたのは事実ですよ。映画に対するスタンスはひとつじゃないはず。

だから今回TIFFコンペについては何も感想はありません。もうコンペですらなくていいと思う。セレクトは面白いんだから。

 

フィルメックスの開会式はわずか10分

存続の危機を乗り越えた感謝の言葉が、フツーに淡々と述べられ、

普段着の審査員たちが控えめに壇上に立ち、それだけ。

さっさとオープニング作品上映へ。

 

去年まではセレモニーじみたものはありました。それをばっさりカットしたという、潔さ。それで十分なんです。

審査委員長のウェイン・ワン監督も「レッドカーペットがないところがいい」と言ってましたよね(通訳さんが訳し忘れて、後で漫談みたいに訂正してたので、私の英語耳が正確かどうかちょっとおぼつかないのですが……ってか、アワードってそんなゆるくていいんだ! と、司会進行はミスが許されない、と叩かれてドロップアウトした自分にとっては目から鱗でした)

 

あとどうしてもフィルメックス公式ゆるキャラナデリンを据えることはできないかw

朝日ホールに住んでるんじゃね疑惑!

 

さて。

秋最大の楽しみだった東京フィルメックスが終わり、

日常が帰ってきます。

働かなくちゃ、と思いながらも

 

思うように日程が埋まらなくてどうしようと思っている……そろそろ冬。

通いやすいところの仕事くださいできれば都内しかも屋内がいいです

東京国際映画祭の意義って。

コンペ審査員長ブリランテ・メンドーサ監督のコメントが凄いですね。

https://eiga.com/news/20181106/8/

 

まぁ年々規模が縮小されていってるTIFFの悲しさはほうぼうで実感しましたが、

ここのコンペの小粒感はいまにはじまったことではない。

 

しかし、それでも毎年光る作品が出てると

私は思っているのですが、

今回の受賞結果はほぼ3本の作品で分け合ってるのは何故だ。

 

私の選球眼のなさはもう自覚してますし、

この3本どれも観ていないのでなんとも言えませんが、

 

芸術性と娯楽性の両立は不可…

ザ・芸術、というしかない作品や

強烈なストーリーテリングに滲む確固とした作家性を感じさせる作品が

ガン無視されてる時点で

 

趣味の問題じゃね?

 

と若干クールに捉えてしまいましたよ。

 

メンドーサ監督はハードな社会問題を背景に作品を撮る人、という印象がある。

あくまで現実の問題ありき、で作品を撮る人なんじゃないかなぁ。

たぶんね。

 

まぁ今回もいつものことながら映画で世界一周的ラインナップ(総花的ともいう)ではありましたが、

『テルアビブ・オン・ファイア』なんて

実際の複雑極まりないパレスチナ問題をちょっとスパイシーなコメディにくるんで、上質にまとめた素晴らしい作品でしたよ。

これもナシってことですか?

 

『ザ・リバー』はどうやら観客から

カザフスタンの現実を描写しているとは思えない」という意見が出されたようですが、

 

べつに現実描かなくてもよくね?

(この作品については近日ちゃんと書きたいと思っています。意図的に閉ざされたユートピア、闖入者によってそこに綻びが生じ、緩やかな、しかし確固とした力関係が生じていく過程を描いていると感じました)

 

日本映画は…

これはもう話題作りとして捉えたほうがいいんじゃないかしら…

「箔づけ」という言葉が浮かびました。

きっといい作品は先に海外行っちゃうんだよ!

 

プレミアにこだわって小粒な作品しか集められなかったのか、

そうじゃないのかは私は知らない。

でも、ここに来る前にすでに他の映画祭で受賞している作品だってたくさん来てる。

 

しかし、ここでグランプリとっても公開されるとは限らなかったり(『ウィー・アー・ザ・ベスト』とか……『グレイン』難解すぎだけどジャン=マルク・バールだよ……)、マニアックなミニシアターでの公開だったり(その次の作品は話題になったけどね!サフディ兄弟!)

 

運営が審査員側につけた注文が焦りを露骨に感じさせるよね。『最強のふたり』みたいな作品を出したい、みたいな。

 

けどもしメンドーサ監督なら『最強のふたり』でも評価しないんじゃないかなぁ。

 

プログラマーが良くも悪くもバランス感覚がありすぎる方なんじゃないかなぁ。

私は好きですよ。

 

実は開会式に端っこで参加してて、

そのあまりのお役所の「わかってなさ」に

全てがすべってる……とため息が出たのですが

いろんな点でお役所感はあるよなぁ。

クールジャパン連呼!寒いよ!

そんな中、部門部門はそれぞれ頑張ってるとは思う。私は毎回楽しみにしてる。

 

もうコンペなしでいいかもしれないね、

小文字のtiffみたいにさ。

そうしたら観客賞だけで丸く収まる。

 

で、矢田部さんセレクトの作品たちは「やたコレ」として1部門を占拠すればいいんじゃない?

 

いろんな意味でそろそろTIFFのあり方を考えなおしたほうがいいんじゃないか、と思ったりもしましたが、

フランス映画祭みたいに、ただの有料先行上映会みたいにはならないでほしいなぁ……

東京国際映画祭・東京フィルメックス2018 極私的みどころ(後半)。

TIFFチケット発売されましたが、

 

案の定鯖落ちから始まるw

いい加減学習していただきたいものですが、

むしろ観客が学習したとも(私は発売時刻には寝てたか仕事してたかどっちかでしたよ

 

どうせ時間通りにアクセスできんよ

そして

 

どうせ戻り出るよ……

(『ROMA』の劇場公開結局なさそうってのが……)

 

戻りを……戻りを待つのです……マメにページをチェックするのです……

 

さて。

秋の例大祭第2弾・東京フィルメックス

 

すげぇ!

すげぇよ!

スポンサー変わってどうなることやらと思ったけど

むしろやりたい放題じゃん!いいぞもっとやれ!

 

しかし

このすごさをどう伝えたらいいのか

わたしの乏しい語彙力ではおぼつかない。

 

まずコンペ部門をしげしげ眺めてみる。

東京フィルメックス・コンペティション(全10作品) | 第19回「東京フィルメックス」

 

例えば

セルゲイ・ドヴォルツェヴォイ『アイカ』。

この監督すでに『トルパン』(2008)でTIFFグランプリ獲ってるし、

この作品じたいカンヌで最優秀女優賞を獲ってる。

また、フィルメックスおなじみペマツェテン『轢き殺された羊』。

すでに『オールド・ドッグ』(2011)でグランプリ、『タルロ』(2015)で作品賞・学生審査員賞。

そして今作はヴェネチアオリゾンティ部門脚本賞

プロデュース、ウォン・カーウァイですってよ。そそられませんか?

  

しかしわたしは過去上映された2本とも見逃している……なぜだ……こればっかりはタイミングなんですぅぅぅ

大慌てで『静かなるマニ石』(2005)を観に行ったものであります。

 

      てか過去作観る機会欲しいわ

 

かように比較的ヴェテランと言える監督と

初長編作、とか、2本目、とかのフレッシュな顔ぶれが混在します。

 

ホー・ウィディン『幸福城市』。

これは中華圏電影好き皆々様が激推しでした。

不勉強にして監督は知らなかったのですが、キャストが

李鴻其(リー・ホンチー)……(『酔・生夢死』(2015)の「ネズミ」!どうしてももう一度観たかったのでがんばって観た!)、高捷(ガオ・ジエ)、丁寧(ディン・ニン)、尹馨(イン・シン)……に加え、

Maydayの石頭(Stone)ですって!そら推すわ!

 

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ビー・ガン『ロングデイズ・ジャーニー、イントゥ・ナイト』。

ワンカット長回し映画が最近話題ですが(ポンっ‼︎

この作品も1時間の長回し しかも

3D

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ですってよ。

 

てーことは有楽町朝日ホールの皆さんに3Dメガネが配られるのかしらね。あのレトロな場内に青と赤の浮かれメガネがぎっしり、という光景が見られるのかしらね。

というのはともかく、予告編超かっこいい!これ観たいなぁ。

 

さて。これを忘れてはいけません。

フー・ボー『象は静かに座っている』。

 

 

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これについてはちょっと私は黙っていた方が良さそうです。

ティーチインは絶対聞き逃せないと思います。

4時間の長尺ですが、観なくてはならない作品だと思います。

 

他にもヴェネチアオリゾンティ部門で最優秀作品賞を獲った、プッティポン・アルンペン『マンタレイ』、ロカルノで上映された3本、柳楽優弥を主演に迎えた作品など、どれもこれも、全部観たい!

   やろうと思えばできちゃうけど

  その間働けない!どうしよう!(働けよ)

 

続いては特別招待作品部門。

特別招待作品 | 第19回「東京フィルメックス」

これもまた

 

痒いところに手が届きまくったラインナップ

 

オープニングがホン・サンス、オープニングじゃないのももう1本(どんだけ撮りまくってんだよ!どんだけキム・ミニちゃんがかわいいんだよ!)

クロージングがジャ・ジャンクー

 

アモス・ギタイリティ・パンスタンリー・クワンブリランテ・メンドーサ

昨年は俳優としてのご参加だったティエン・チュアンチュアン

そしてそしてツァイ・ミンリャン!やった!

ちょっともうこれは。ねぇ。

 

とは言っても今わたし監督名しかつらつらあげてないよね。

「監督で観る」層を掴んでる監督たちだよね。

安心と信頼のブランド揃えました、って感じ。

 

とは言ってもアモス・ギタイって劇場公開あったかしら。

調べたら1本しかなかった。

他にも「必ず劇場でかかります」って約束されてる監督は1人か2人しかいない。

ホン・サンスですら今年まとめて上映されるまではしばらくかからなかった。

ツァイ・ミンリャンですら劇映画を作らない限りはあやしい。

ここでしか観られないんかもしれないのですよ。

 

さらにさらに、サンセバスチャン映画祭受賞作 奥山大史『僕はイエス様が嫌い』これは面白そうだなぁ。

 

今年の特集上映はアミール・ナデリ。

特集上映 アミール・ナデリ | 第19回「東京フィルメックス」

西島秀俊さまがボッコボコにされるのがたまんない『CUT』(2011)でご覧になった方も多いことかと思いますが、

劇場に入ると必ず監督がどこかにおり、

 

 

劇場の鎮守の神ナデリン

的な

おれの中ではすっかりゆるキャラ的な存在として認識されていますが(すみません)

1070年代からのながーーーいキャリアを持つイラン映画の巨匠であります。

言うまでもねぇや

 

今回、初期作品『ハーモニカ』(1974)『期待』(1974)と、

今年の2本『華氏451』(脚本アミール・ナデリ 監督ラミン・バーラニ)『マジック・ランタン』が上映されます。

ちょっと概要を読む限り、『CUT』や、『山<モンテ>』(2016)とは違った感じなのかしら。あの2作はめちゃくちゃハードボイルドでございましたなぁ。

 

ざっと駆け足でご紹介してまいりましたが、

まぁ春先のスポンサー関連のゴタゴタで我々をざわつかせた後

この力の入ったラインナップでございます

ありがたく拝見し、

 

そして来年その次も無事に開催されることを祈りましょう……

そしてそのために私たちに何ができるかを

ちょっとだけでも考えた方がいいんじゃないかな、ともふと思いました。

 

真面目かよ。

 

 

注・人名の表記は今回東京フィルメックスからの公式リリースに従いました。

  ご興味を持たれ検索された方やお詳しい方お気付きのように、

  各サイトによって表記に揺れがあります。

  

  まぁもろもろ基準になるのはImdbなんじゃないかね(困惑)